内職仲介業の直営・FC店を計44店、全国展開する。作業者には自由な時間と収入、FC店には物流効率化と業容拡大、顧客には人件費削減と多品種生産。三者に様々なメリットがある、言わば三方“二両”得を実現する。
(日経ビジネス2017年12月25日・2018年1月1日号より転載)
主婦や高齢者に内職作業を仲介。クラウドソーシングと組み合わせ、全国にフランチャイズを展開するという独自の業態(写真=早川 俊昭)

愛知県の主婦、長谷川真佐美さん(48)は、自宅でテレビをつけながら、バラやジャスミンの花弁をプラスチック容器に詰めていく。植物標本の雑貨の加工作業だ。長谷川さんはDVDをレンタル店の専用ケースに詰めるなどの内職もこなす。
内職の賃金は低い。時給に換算すると250円程度で、1日8時間の作業で月収は約4万円。それでも続けるのは、5年前に半身まひになり障害者認定を受けた夫の介護のため。内職なら製品の引き取りと納品以外、自宅でできる。長谷川さんはパートとして勤めていたとき、シフトを増やしてほしいという店側の頼みを断れず、過労で倒れてしまったこともある。「自由な時間で働けることはお金よりも大事」と語る。
長谷川さんに仕事を仲介するのが内職市場(愛知県春日井市)。内職仲介業は通常、地域密着の小規模業者が手掛けている。一方、内職市場は7つの直営店に加え、関東から九州にかけて37のFC(フランチャイズチェーン)店を持つ。登録作業者は約3000人に上る。
内職市場とFC店の両方に手数料が落ちるため、通常の仲介と比べて作業者の取り分が減ることもある。しかし、大規模展開することで全国チェーン店からまとまった受注を取りやすく、短納期で高利益の作業も請け負える。結果的に作業者の収入は安定するという。
もちろん取り分が不満で辞める作業者も少なくない。経営する運送会社でFC店も営む村山明子さんは「作業者に気持ちよく働き続けてもらうため、利益を犠牲にしてでも取り分を増やしている」と語る。それでもFC店には「得」がある。
FC店の多くは村山さんのような陸送業者だ。理由は3つ。製造業や小売業を本業の顧客として持ち、内職の営業もしやすい。拠点は高速道路近くにあるため、周囲には車を持った家庭が多く、商品の引き取り・納品を自らこなせる作業者が集まりやすい。そして、本業へのプラス効果が大きい。
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