コンテナに隠された核物質を探知
●港湾での検査の流れ
<b>コンテナに隠された核物質を探知<br />●港湾での検査の流れ</b>
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 五輪に向けては、港湾での不審物の輸入にも注意しなくてはならない。東京港では貿易向けのコンテナが1カ月で30万~40万個(20フィートコンテナ換算)取り扱われる。凶悪犯がコンテナ内に核物質を隠し、日本に持ち込む可能性も否定できない。水際での対策も必須だ。

 「理論上はコンテナを開けずに高精度で内部検査できる技術は整った」。こう話すのは京都大学エネルギー理工学研究所の大垣英明教授。放射線の一種であるガンマ線などを活用した検査システムの開発に取り組んでいる。

<b>国内の一部港湾に導入されているX線検査装置。ガンマ線検査装置などと併せて使えば核物質探知の精度が高まる</b>(写真=共同通信)
国内の一部港湾に導入されているX線検査装置。ガンマ線検査装置などと併せて使えば核物質探知の精度が高まる(写真=共同通信)

核物質の種類まで特定

 システムの仕組みは次の通りだ。まず、運ばれてきた全てのコンテナを、遮蔽壁で囲まれた大型の検査施設に入れる。そこで中性子を周囲から放射し、内部に不審物がないか調査する。所要時間はコンテナ1個当たり3分程度。ここで、核物質が隠されている可能性の有無を判別できる。

 問題が見つかったコンテナは続いて、X線検査に回される。X線は内部にある物質の質量の違いなどを識別でき、質量の重い核物質の具体的な位置を特定することができる。

 そして最後に約10分のガンマ線検査となる。ガンマ線検査を利用すれば、ウランやプルトニウム、コバルトなど核物質の種類の違いに加えて、同じウランなどの物質のなかでも原子構造の違いまで識別が可能になる。これによって、コンテナを開けて検査員が内部調査する前に、対処策などを練ることができる。

 「短時間で大まかな調査ができる中性子と、詳細な検査が可能なガンマ線を組み合わせることで効率的な検査を可能にした」(大垣教授)。1m四方のコンテナを使った実証実験を既に成功させており、現在は実用化に向け準備を進めている。

 2020年に開催される東京五輪。都の調査チームによると、警備関連の費用だけでも2000億~3000億円が見込まれる。大会の安全確保は国の威信にも関わる重要事項。最新技術が貢献できる余地は大きい。

<b>リオから引き継がれた五輪旗(右)。東京五輪でも安全確保が最重要ミッションだ</b>(写真=共同通信)
リオから引き継がれた五輪旗(右)。東京五輪でも安全確保が最重要ミッションだ(写真=共同通信)

(日経ビジネス2016年11月21日号より転載)

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