さらにスカウターは正社員の相談員を抱えない。契約する3000人の相談員に彼らが働いた分だけ給料を支払う。潜在的な転職ニーズを掘り起こすにはプロよりも、先輩や友人といった信頼関係がある人の方が効果的だからだ。

「潜在的な転職希望者には優れた人材が多い」と語る中嶋汰朗社長(写真=稲垣 純也)
「潜在的な転職希望者には優れた人材が多い」と語る中嶋汰朗社長(写真=稲垣 純也)

 口コミでサービスを広げるため、広告費も大幅に削減できる。冒頭の高橋さんはSNS(交流サイト)で1000人以上友達がいて、幅広い人脈を持つ。高橋さんのような相談員が悩みを聞くことで転職市場へと自然と導くのだ。「潜在的に転職を希望する人には優秀な人が多い。どう掘り起こせばいいのかを考え、今のサービスを思いついた」(中嶋汰朗社長)

 高橋さんは後輩から相談を受けながら、スカウターのデータベースに希望する年収や業界、勤務地などを登録していく。スカウターの社内にいる専門の社員の支援も受けて、転職者の条件に合致しそうな企業を探す仕組みだ。

 スカウター経由で転職が決まると、同社は企業から転職者の年収の30%を成功報酬として受け取る。この中から転職者と相談員それぞれに年収の5%を支払う。例えば年収500万円なら、25万円ずつ支払われる計算だ。最高額はあるIT企業の事業部長に転職したケースで75万円だったという。

 相談員にとってもメリットは大きい。
ビジネスパーソンの間でも、副業への関心は高まっているが、収入は少ない場合が多い。エン・ジャパンの調査によると、副業経験者の月収は5万円未満が70%を占める。だが、スカウターの相談員は人脈を生かせば、短時間で高収入を得られる可能性がある。

副業を認める動きが追い風に

 ロート製薬やソフトバンクなど副業を認める会社が増えていることも追い風だ。厚労省は11月に企業が就業規則を決める際のひな型となる「モデル就業規則」を副業を認める内容に改正する案を有識者検討会に提示。これまで原則禁止としてきたが、事前に届け出を行うことを前提に「副業ができる」と明記した。今後、このような働き方が広がる可能性が高い。実際にスカウターの相談員は、副業を解禁した企業で働く社員の登録が増えているという。

 中嶋社長は大学時代に友人と人材紹介の会社を起業。当初は一般的な人材紹介業を営んでいたが、業績は伸び悩んだ。16年に現在のモデルに転換したところ、瞬く間に人気になった。

 18年には医師や看護師向けの転職支援サービスも始める予定だ。勤務が不規則で、転職したくても専門家に相談できる時間が少ない。一方、同僚や先輩とのつながりが深いため、チャンスが大きいと中嶋社長は考えている。

 副業や転職が広がると、企業にとっては人材を引き抜かれる懸念が高まる。企業には人材をつなぎとめる魅力を磨くことが求められている。