

ちょっと悩みを聞いてもらえませんか」。高橋卓さん(49歳)は後輩からよく相談を持ちかけられる。その多くは、今の職場の仕事内容や待遇に対する不満だ。高橋さん自身は世話好きで、後輩の悩みを聞いたり、友人同士を紹介したりすることが多い。
実は10月からこうした何気ない相談が収入になっている。高橋さんは転職支援サービス、スカウター(東京・渋谷)に相談員として登録しているからだ。スカウターは、誰でもヘッドハンターになれるサービスを提供する。相談員が友人の転職相談に乗り、希望に合う求人企業に転職が決まった場合に、紹介手数料が支払われる仕組みだ。
2年で相談員が3000人に
本社 | 東京都渋谷区宇田川町2-1 渋谷ホームズ1305 |
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資本金 | 2億1334万円 |
社長 | 中嶋汰朗 |
売上高 | 2億円 (2018年9月期見込み) |
従業員数 | 15人 |
事業内容 | 転職支援サービス |
2016年1月にサービスを開始後、高橋さんのような相談員が約3000人に増加。求人掲載企業数は1000を超え、数百人が転職するなど成長している。
一般的なビジネスパーソンは、簡単に人材紹介業を始められない。許可が必要で要件が厳しいのだ。500万円以上の資産、20m2以上の事業所、職業紹介責任者講習の受講が必須になる。
スカウターはこの課題を解決する仕組みを作った。まず同社が高橋さんのような相談員と雇用契約を結ぶ。相談員は、スカウターが取得した有料職業紹介事業者許可を利用し、働いた分だけ給料を受け取る。転職相談の日報を書くと時給が発生し、相談を聞くためにカフェなどを利用すると活動費も支給される。時給が1000円、活動費は1回3000円だ。「お酒を飲みながら相談に乗ることが多い。その費用を負担してもらえるのはありがたい」(高橋さん)。このような方式での事業運営は、厚生労働省に認められているという。
転職市場は活況だ。10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.55倍と、43年9カ月ぶりの高水準となっている。人材紹介業の市場も15年度は前年度比13.5%増の2100億円(矢野経済研究所調べ)と6年連続で増加している。
全国の転職者の数は16年に約306万人(総務省調べ)に達した。増加する転職希望者に対し、人材紹介各社はテレビCMや広告で認知度を高めようとしている。事業規模が大きくなればなるほど、広告費も相談員も増えるのが一般的だ。このため体力がある大企業による市場の寡占化が進んでいる。
スカウターはそんな人材紹介業のビジネスモデルの変革に挑む。まず異なる層をターゲットにする。転職希望者ではなく、潜在的に転職したいと思っている人を狙う。日本で働く人は全国に6581万人(10月時点)。転職市場の20倍以上の大きな市場だという。
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