荷重を支え、衝撃を吸収する。これらの条件を満たしつつ、デメリットを解消するにはどうするか。タイヤ各社の開発陣がたどり着いたのが「空気は使わない」という、発想の転換だった。

●空気レスタイヤ、3つのメリット
1.絶対にパンクしない
スペアタイヤや修理キット不要に。車両の軽量化に貢献
2.メンテナンスの手間軽く
空気圧の管理が不要で、走行・快適性能が落ちにくい
3.デザイン性が向上
樹脂製のためカラフルな加工も可能。意匠の自由度高く

変形する樹脂が「バネ」になる

 空気に代わって活躍するのが樹脂製のスポークだ。地面に接するトレッドゴムとホイールをつなぐ。柔軟性のある種類の樹脂を使っているので、荷重がかかると曲がり、解放されると元に戻る。この性質がバネとなる。

ブリヂストン
ブリヂストン
樹脂製のスポークが変形することで、タイヤにかかる重さを支え、地面の凹凸から受ける衝撃を吸収

 ブリヂストンが開発する空気レスタイヤの特徴はスポークが初めから曲がっている点。車両が走るとき、タイヤには様々な方向から複雑に負荷がかかっている。あえて最初から曲げておくことで、どんな方向から力がかかっても狙い通りの曲がり方になるよう誘導している。

 革新タイヤ開発部の阿部明彦フェローは「シミュレーション技術を生かし、スポークの各部分への負荷のかかり方を最適化している」と話す。樹脂材料技術の向上も、空気レスタイヤの登場を後押ししている。

 ブリヂストンが空気レスタイヤの開発に着手したのは2008年ごろ。当初は「本丸」である自動車向けタイヤを開発し、コンセプトモデルを公表してきた。だが認知度を高めるにはまずは実用化を急ぐ必要があると判断。性能要件が自動車ほど厳しくない自転車向けの開発にも着手し、17年春に発表した。熱を加えれば再び加工できる熱可塑性樹脂を採用しており、金属部品や有機繊維も入っている空気入りタイヤよりリサイクルしやすい利点もある。

 ブリヂストンは自転車向けの空気レスタイヤについて、19年の市販を目指す方針。今後も乗用車や2輪車向けなど用途を広げる考えだ。

住友ゴム
住友ゴム
板状のスポークを斜めに配置することで、接地面で重さを支えるスポークの数が一定に。タイヤの安定性が高まる

 樹脂を活用する点は共通ながら、スポークを進行方向に対して斜めに配置するのが住友ゴム工業だ。垂直に配置すると回転のタイミングによって、タイヤ下部で荷重を支えるスポークの本数が変わる。すると「走行安定性が損なわれる」(住友ゴム)。そこで同社は空気レスタイヤ「ジャイロブレイド」で、スポークの配置角度を工夫した。

 スポークの間隔がバラバラなのも特徴だ。走行時に生じるノイズの周波数が一定にならないように設計することで、騒音を耳につきにくくしている。

 開発に着手した12年春には10kmに満たなかった走行可能距離は、現在数千kmまで伸びた。すでに同社主催のゴルフツアーで電動カートに装着しており、乗用車への装着に向けて耐久性を高める。

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