空気を入れる必要のない「空気レスタイヤ」の開発が熱を帯びている。樹脂製のスポークで車両の重さを支え、地面の凹凸から受ける衝撃も吸収する。来るべき自動運転・EV社会に向け、足元のタイヤも姿を変えようとしている。

(日経ビジネス2017年12月18日号より転載)

 今秋の東京モーターショー。EV(電気自動車)など最先端の自動車を披露する展示会にあって、“自転車”が注目を集める一角があった。群がる来場者の視線の先にはタイヤ。ただしそのタイヤは見慣れた「丸くて黒いゴムのかたまり」ではなく、真っ赤な色をした樹脂が、ホイールから放射状に伸びている。ブリヂストンが開発した空気レスタイヤ「エアフリーコンセプト」だ。

空気はバネのような役割を果たす
●空気入りタイヤの断面イメージ図

 見た目は奇抜だが、試乗した人は口々に「至って普通だね」とつぶやいた。だがそんな淡白な感想も、開発担当者にとっては何よりのほめ言葉になる。空気を使わないタイヤを実用化できれば、タイヤ史に刻まれる大きな転換点になるからだ。

 空気はタイヤ内でバネのように作用し「荷重を支える」「衝撃を吸収する」という2つの役割を担っている。空気は軽く、調達コストもゼロ。高速で回転し続ける過酷な環境下でも劣化しないのも魅力的。現在、世界で売られているタイヤのほとんどは空気入りだ。

適切に点検しているのは少数派
●自動車保有者に聞いた「タイヤ点検の頻度」
出所:JAF「タイヤのパンクに関するアンケート調査

 一方でデメリットもある。パンクのリスクだ。ひとたびパンクすればタイヤは荷重を支えられなくなり、車両はその場で立ち往生する。不測の事態を防ぐため、乗用車ではスペアタイヤや修理キットの搭載が求められている。だが車両はその分重くなり、燃費性能や走行性能が犠牲になってしまう。

 パンクに至らなくても、タイヤの空気圧は自然に減り、性能は徐々に落ちていく。乗用車の場合、空気圧の点検は1カ月に1度が理想。だが日本自動車連盟(JAF)の調査によると、そのペースでタイヤを点検しているユーザーは4人に1人どまり。同調査はJAFウェブサイトの訪問者が対象で、実際に適切なメンテナンスを実施しているユーザーはさらに少ないといえる。