社長と副社長がけんかをしていると勝てない

あくまで、経営と現場はお互いを尊重して、役割分担をしっかりしなければならないということですね。

<span class="fontBold">村井満(むらい・みつる)氏</span> 1959年、埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、83年に日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社。主要事業会社の社長などを歴任し、14年にJリーグの第5代チェアマンに就任。ビジネスの第一線で活躍した経験も生かし、経営人材の育成やデジタル技術の活用など改革を推進している。
村井満(むらい・みつる)氏 1959年、埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、83年に日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社。主要事業会社の社長などを歴任し、14年にJリーグの第5代チェアマンに就任。ビジネスの第一線で活躍した経験も生かし、経営人材の育成やデジタル技術の活用など改革を推進している。

村井:先日面白い話を聞いたのですが、欧州の主要クラブの経営トップについて、そのリーダーシップのあり方などに関する様々な研究があるんです。一般的にはチームの人件費が高いクラブが安定的に結果を出すという正の相関があるのですが、中には、お金をかけてないのに勝ち点1あたりの投資コストがすごく低いクラブや、逆に非常に高コストな金満クラブがあるんです。

 その差は何かを分析している人に話を聞いたのですが、まず考えるのは選手ですよね。スター選手。その次は監督とかコーチとか。だいたいこのあたりに投資をしっかりすれば生産性が高くなると思いがちですが、実はフロントの経営レベルがすごく現場の士気に影響を与えているというんです。

 例えば、社長と副社長がけんかをしているといったことについて、選手はすごく敏感なんだそうです。選手というのは個人事業主ですから、経営者や監督が代わってしまうと、自分の人生も変わる可能性がある。あのオーナーは今の監督をどう見ている、こう評価しているといった情報を頻繁に交換していて影響を受けてしまう。そんな心配から解放されて、とにかく結果を出すことに向かっていける鉄板のチームワークを持っているチームは、素晴らしいパフォーマンスを発揮できる。

 今回のV・ファーレンはまさにそうしたケース。選手も監督も同じなのに、経営者が交代してから一気に強くなったじゃないですか。そういうのが実は海外において、先行の研究事例がもう存在しているんです。リーグでもこうした分析を具体的に実施していくプロジェクトを始めようと思っているところです。

いずれはACLにだって行ける

確かに、V・ファーレンのケースはその研究内容にぴったりですね。冒頭に、他のチームにとっても刺激になるという話をされていましたが、まさにJ1の強豪にとってもインパクトは大きいでしょうか。

村井:まあ、他クラブの皆さんは、まだまだJ1はそんな甘くないぞ、お手並み拝見と思っているかもしれませんが(笑)。ただ、コンスタントに結果を残し続けることが、この蓋然性の低い世界ではものすごく難しい。これを成し遂げているチームに共通するものというのが、フロントのチームワークじゃないかという仮説は私にはありますね。

:V・ファーレンはそんなに選手層が厚いわけじゃないので、当面は苦労もすると思うんですよ。ただ、コンセプトをぶらさずに地域のためにということ、観戦いただくお客さんに少しでも笑顔になってもらおうとか、明確に目指すものがある。それに向かってチームが「ワンチーム」になっていれば、僕のイメージだと大丈夫だと思うんですね。

 この前も、「浦和レッズさんが乗り込んできたら10対0で破ってやるぞ」と言ってしまって、「いかんなあ」と話していたのですが(笑)。でも私はそういう言葉の力を、純粋に信じているところがあるんです。J1に昇格したということは、J1の力があったからだと私は言うんですね。本当に気力とか信念があったら夢はかなう。ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)にだって行けるんじゃないか、とかね。もちろん甘くないことは分かっているけれど、それを私は信じています。

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