ビジネスだけなら掃除機を1台でも多く売った方がいい

:私たちも、記者会見の最初に言ったんですよね。「収益を考えるんだったらもう勝てない」と。

旭人:そうですね。実際のところ、ビジネスの面だけを考えれば、我々としては試合のチケットより、本業で掃除機を1台でも多く売った方がいいわけです。でも、本当に村井チェアマンがおっしゃるように、それを超えるスポーツの価値というものを我々は理解しているつもりですし、父も私もスポーツが大好きです。父が創業した会社を通じて上げた利益を長崎に還元して、たくさんの方々を笑顔にすることが大変意義のあることだと最初から考えていましたね。

Jリーグのクラブ経営の難易度や課題という面で、明さんと旭人さんはどのように感じておられますか。

:Jリーグの業界規模というのは、全クラブの営業収入で1000億円に届いたところでしょうか。でも、欧州のリーグなどの規模感にはまだまだ届かない。今からさらに日本のサッカーを育てて欧州に近づけるためには、少なくとも5000億円程度まで引き上げなければならないと思います。

 V・ファーレンの営業収入も今年は25億円ぐらいが見えたところですが、まだまだ規模は小さい。100億円ぐらいまでいきたい。地域のために我々が貢献する一方で、地域の方々の協力がなかったらできないと考えているんです。行政も含めてそこの部分の意識を高めてもらうことが重要ではないでしょうか。

旭人:会社の経営においてもクラブの経営においても、大切なのはお客さんが何を望んでいるかを把握することだと思いますね。その上で、例えば3万円を支払っていただいたことに対して、3万円以上の価値をお返ししていく。それをやり抜いていけば、最初に血がすごく流れても必ず戻ってくるだろうと考えています。

20年、30年とオーナーシップを持って関わっていく

 私は今38歳ですが、これからV・ファーレンについては20年、30年と自分がオーナーシップを持って関わっていく考えです。その中で上がってきた利益をジャパネットが全て持っていくのではなく、長崎に還元し続ける。それが我々にとっても最高のCSR(企業の社会的責任)につながるのだという思いがありますね。

村井:お話を聞いている中で私も感じるのは、地域にオーナーシップを持つ人々が増えていかねばならないということですね。サッカーというのは数万人が入るスタジアムを必要としますし、当然、公共交通の整備も必要になる。行政や地域の住民の方々との利害を調整しなければならない一大プロジェクトになります。

 従来であればそうした場合、首長だったり政治家に陳情して整えてもらうというメンタリティーが存在していましたが、今は国も自治体もお金がない。だとすれば、地域の方々が自分たちで立ち上がって、こういう町にしていきたいということまでも含めて、主体的に動くことが必要になってくるのではないかと思います。

 これは、実はサッカーがそういう部分から火を付けていくことで、本当の意味で地方が豊かになっていくことにもつながるのではないかと感じています。日本は長らく中央集権でやってきた国なので、個々人の意識にまで目を向けないと簡単には変わらない。オーナーシップを持つ市民たちによる豊かな地域社会を実現する知恵が、我々にももっとあればと感じますね。

(明日公開の後編に続きます)