:ほとんどお互い細かい話はしないよね。

旭人:そうだね(笑)。

:でも僕のスタンスとしては、来年もう70歳だから、何年もやろうとは思ってない。とにかく再建することを僕はミッションとして持っているんです。それができたら、やっぱり若い人がこのクラブを100年と続くクラブにしなきゃいけないと思う。これは基本的にジャパネットでも同じ気持ちでした。

Jリーグのクラブ経営は通常の企業経営より難しい

村井さんはチェアマンとして、Jリーグのクラブ経営については様々なケースをご覧になってきたと思います。クラブの経営のあり方について重要な部分や課題はどのように考えておられますか。

<span class="fontBold">村井満(むらい・みつる)氏</span> 1959年、埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、83年に日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社。主要事業会社の社長などを歴任し、14年にJリーグの第5代チェアマンに就任。ビジネスの第一線で活躍した経験も生かし、経営人材の育成やデジタル技術の活用など改革を推進している。
村井満(むらい・みつる)氏 1959年、埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、83年に日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社。主要事業会社の社長などを歴任し、14年にJリーグの第5代チェアマンに就任。ビジネスの第一線で活躍した経験も生かし、経営人材の育成やデジタル技術の活用など改革を推進している。

村井:まず一般論として、通常の企業経営とJリーグのクラブ経営でいうと、私はクラブ経営の難易度の方が高いのではないかと感じています。私自身も民間企業の出身ですが、サッカーにおいては投資に対するリターンの蓋然性が意外と低い。普通であれば1億円投資をしたら、どのぐらいの内部収益率があるかなど、投資がリターンする確からしさがほぼ把握できます。

 M&A(合併・買収)にしても、過去のパターンを分析することで利益貢献などある程度そろばんをはじける。しかし、サッカーの場合は海外クラブから獲得した選手の奥さんが日本をあんまり好きじゃなかったので帰ってしまったとか、怪我してしまったとか、計算通りにいかない面が大きいんですね。

 あとは、企業であれば例えば東証一部の企業が毎年3割、東証二部に落ちることはまずないですよね。ただ、Jリーグのクラブの場合は観客数も増やして売り上げを上げても、競技成績でJ1からJ2に落ちる可能性がある。落ちればすぐに観客数が半分になり、スポンサー収入も落ちる。相対的な厳しい競争の中で、収支がそれに連動する怖さを持つというような、なかなか計算通りにいかない難しさがあります。ですから、投資に対しては逡巡するケースが多いです。

しかし、ジャパネットHDは、あえて火中の栗を拾いました。

村井:そうなんです。例えば小売店などであれば、血を止めるためにしばらく店舗を閉鎖して、当面身の丈経営に落としてから再開を目指すステップが踏めますが、サッカーは毎週試合があるからそれができない。加えて、今回はデューデリジェンス(資産査定)などで、経営の相談や引き継ぎをしてくれる相手も見えなかった。

 だから、今回のジャパネットさんの決断は、投資をなんとか金銭的にリターンしようとするそろばんは、多分通常の感覚でははじけなかったですよね。本当のオーナーシップがなければできなかったことだと思います。

 一方で、サッカーのクラブという存在は、売り上げ規模でいえば中規模程度の企業体かもしれませんが、県民を勇気づけたり、子供達の教育に貢献できたり、実はものすごく重要な社会的価値を持っていると考えています。明さんと旭人さんは目先の収支ではなく、そうした価値を非常に重視されて決断されたのだと思います。だから私はすごく嬉しかったですね。

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