バイオテク関連の目利きがそろう

 OUVCは、実際に投資活動を始めるための第1号投資ファンド設立までに約7カ月間かかった。その間は、実務部隊となる投資部と経営企画部、管理部の人材確保に当てた(実際にはその前から人材確保に動いていた模様)。

 投資実務の要(かなめ)となる投資部には、森田和彦執行役員と坂本芳彦部長などの5人が就任した。「この5人はVC出身者や製薬企業出身者などの実務経験者で、博士号を持つ者が2人もいるなどの実力者ぞろい」と、勝本執行役員は語る。特に投資部には、バイオテクノロジーや創薬などの研究成果や事業化立案の目利きがそろっていると考えられる。

 OUCVが設立されてから、投資部を中心に、既存の大阪大発ベンチャー約90社や、企業との共同研究を実施したり独創的な研究成果を持っていたりする大阪大の研究室など、合計約500案件を対象にヒアリング調査などを実施した。「プレ1次抽出結果として50件程度を絞り込み、さらに継続して審査している途中」と、勝本執行役員は説明する。その間に新規の優れた案件も発掘しているようだ。

投資第3弾は、細胞培養装置開発などのジェイテック

 記者発表会を開催した翌日の1月29日には「ジェイテックへの投資を実行した」とのプレスリリースを発行した。このため、2015年12月ごろからは、投資案件第2弾と投資案件第3弾関連の各種の資料作成や開示する内容の確認などの作業に追われたと推定できる。

 ジェイテックは、1993年12月5月に設立された精密機械・システムなどを開発する非上場の中堅企業だ。創業当初から細胞培養装置開発などを手がけてきた。

 同社は大阪大の研究開発成果であるナノ加工・計測技術を適用して、2007年当時から理化学研究所と共同で「X線高精度楕円ミラー」を開発し実用化、大型放射光施設の「Spring-8」などの大型施設に採用された。その後は、日欧米・アジアの各放射光施設などに採用されてきた実績を持つ実力派の中堅企業である。これまで大阪大との共同開発をいくつも実施している。

 例えば、2015年からは、同社は大阪大吹田キャンパス内にある産学連携本部の研究施設に実験室を借り、同実験室を「細胞培養センター」と位置付けて開発を続けている。これによって、同社のライフサイエンス事業の中核製品である自動細胞培養装置の高性能化や品質安定などを図る計画だ。

 ジェイテックは、1993年の創業翌年から大阪中小企業投資育成(大阪市)の投資を受け、その後も投資ファンドの投資を受け、先端分野向けのハイテク機器・システムなどの事業で成長を続けてきた。今回、OUCVはジェイテックと同社への既存の出資者から「事業拡大のための投資を求められた」経緯があり、対象案件とした。OUVCは同社の成長性などを審査し、支援・投資委員会に提案して、同社への投資判断が下った。このジェイテックへの投資決定もOUVC社内では、2015年内には決まっていた。

 今回、ジェイテックへの第1号投資ファンドからの投資額は1億4000万円で、1月29日に実行した。同時に、バイオ・サイト・キャピタル(大阪府茨木市)もジェイテックへ投資している。

 第1号投資ファンドの投資先は、投資第1弾と第3弾が比較的順調に成長している2社であるのに対して、第2弾はシード期のベンチャーとなった。OUVCは、IPOやM&Aなどの出口へのシナリオが比較的読みやすい“成功確率”が高いと考えられる2社と、出口までには時間がかかるかもしれないが、急成長が期待できる1社の組み合わせという、分かりやすいポートフォリオを描いていると、容易に想像できる。

 OUVCは、日本を代表するグローバル企業が大阪大発ベンチャー企業から産まれることを信じ、発掘作業にまい進している。大阪大などの有力な国立大が傘下にVCを持つというイノベーション創成の“試み”が動き始めている。

丸山 正明(まるやま・まさあき)

技術ジャーナリスト。元・日経BP産学連携事務局プロデューサー
東京工業大学大学院非常勤講師を経て、現在、横浜市立大学非常勤講師、経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所の事業評価委員など。