「日亜化学工業などメーカー各社が青色レーザーの量産を進め、プロジェクターに搭載できる価格になってきたため、それを使う方法を模索した」と、エプソン販売の蟹澤啓明部長は説明する。

 光源がランプからレーザーに代わることで、プロジェクターの機能は大きく4つの点で進化する。順に特徴を見ていこう。

レーザープロジェクター4つのメリット

 1つ目の特徴は「長寿命」。大まかにいえば、既存のランプ式に比べて10倍ほど長持ちする。プロジェクターの製品寿命は、使い始めたときと比べ、明るさが半分になるまでの時間を指す。ランプ式が2000~3000時間程度なのに対して、レーザープロジェクターは2万時間ほどになる。

 光源の寿命が長ければ、ランプ交換などメンテナンスの手間が省ける。「大学の大教室など高い天井につり下げて使う場合は、はしごを使ったり、専門の業者を呼んだりして交換する必要があった。代わりの教室を用意するなど授業にも支障が出るため、ランプ交換にかかる時間と手間は無視できない」(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの石井浩一郎シニアゼネラルマネジャー)。交換用ランプの在庫を管理する必要もなくなる。

 2つ目の特徴は「どんな向きでも使える」ことだ。床や天井に映像を投射するプロジェクションマッピングでは、プロジェクターを水平ではなく急角度に傾ける必要がある。

 ランプ式の多くは、光源が発する熱を冷やすために空気を用いる。垂直方向に設置した場合、ランプ内で熱が特定の場所にこもりがちになる。この熱のせいで、ランプが割れたり寿命が短くなったりするのが課題だった。

 一方のレーザープロジェクターは、ヒートシンクや液体を使って光源を冷却するケースが多い。機器全体を冷却できるため、どの方向に向けても設置できる。さらに、機器内部に空気を循環させる必要がないため密閉構造を保てる。チリやホコリの進入を防げるため、故障しづらくなるのも利点だ。

床や天井にも レーザープロジェクターで 投映できる
●セイコーエプソン本社 エレベーターホールの様子
レーザープロジェクターは側面の壁だけでなく、床や天井に向けて長時間投射しても、故障なく使える。工場の作業指示など用途が広がる

 プロジェクションマッピングが期待されているのは、エンターテインメント分野だけではない。物流拠点や工場への普及を狙っているのがセイコーエプソンだ。センサーを使って作業者の場所を把握し、天井に設置したレーザープロジェクターから「矢印」などを投映すれば、組み立てラインなどの作業を効率化できる。同社は本社オフィスのエレベーターホールを“実験場”として、空間全体に映像を投射する取り組みを始めている(上の写真)。