超高齢化・人口減少は、地方が直面する喫緊の課題であり、それを克服するために地方創生への取り組みが大いに期待されている。ただし、なかなか目に見えた成果を感じにくいのが現状だろう。地方創生の実現に向けて何が必要かという観点から、東京一極集中からの脱却を唱える増田寛也氏と、地元新潟を起点に地方活性化を果たす池田弘氏に対談してもらった。その前編。

<b>増田 寛也(ますだ・ひろや)氏</b><br /> 元総務相、野村総合研究所顧問<br /> 1951年東京都生まれ。77年東京大学法学部卒業後、旧建設省(現国土交通省)入省。95年岩手県知事当選、連続3期務める。2007年第1次安倍晋三内閣から福田康夫内閣の2008年まで総務相。2009年から現職。日本生産性本部副会長、東京大学公共政策大学院客員教授なども務める。地方自治をはじめ政策通として知られ、「一億総活躍国民会議」の民間議員など多くの政府の政策会議や審議会の中心メンバーでもある。(写真:都築雅人、以下同)
増田 寛也(ますだ・ひろや)氏
元総務相、野村総合研究所顧問
1951年東京都生まれ。77年東京大学法学部卒業後、旧建設省(現国土交通省)入省。95年岩手県知事当選、連続3期務める。2007年第1次安倍晋三内閣から福田康夫内閣の2008年まで総務相。2009年から現職。日本生産性本部副会長、東京大学公共政策大学院客員教授なども務める。地方自治をはじめ政策通として知られ、「一億総活躍国民会議」の民間議員など多くの政府の政策会議や審議会の中心メンバーでもある。(写真:都築雅人、以下同)

池田:増田さんは地方創生の一番の味方であり支援者で、いつも勇気をいただいています。これから地方創生を進めていく上で、なにが一番大事だとお考えですか。

増田:日本の将来を考えると地方創生は不可欠なものですが、実際に地方でそれを実践しているケースはまだまだ少ない。池田さんがやられていることはその意味でたいへん貴重で、私もいつも参考にさせてもらっています。

 地方創生の旗振り役になっているのは、内閣官房に設置されている「まち・ひと・しごと創生本部」ですけれど、名前にある「まち」「ひと」「しごと」はどれも大事な要素。とりわけ私は「ひと」が大事だと考えています。

池田:私もそう思います。とくに必要なのはリーダーとして地方創生に結びつく活動に取り組む人です。こういう人をどんどん育成していかなければいけない。残念ながらいまはまだ地方にそういう人が少ないんです。

イノベーションを起こす人材を増やすには

増田:一つの手として、年配の方々にがんばってもらうというのもあると思います。私が具体的に考えているのは50代後半くらいからです。ここから上の世代は、日本の古き良き正社員中心主義の時代の社員教育を受けています。スキルが高いので様々なことに柔軟に対応できるはずだから、彼らの能力を活かさない手はない。

 先日出された日本老年学会の提言では、65歳~74歳は「准高齢者」として社会の担い手としてとらえ直そうとしています。65歳を超えても「老け込むのは早い」のであって、実質的には75歳くらいまではまだまだ現役で活躍できる人がたくさんいます。そういう人にもぜひ地方創生の担い手、あるいは強力な支援者になってもらいたいと思っています。

<b>池田 弘(いけだ・ひろむ)氏</b><br /> NSGグループ代表、アルビレックス新潟取締役会長<br /> 1949年、新潟市生まれ。新潟県立新潟南高等学校卒業後、國學院大学で神職養成講座を受講し、東郷神社等で実習を重ねる。74年、神明宮(新潟市鎮座)の禰宜に就任(05年宮司就任)。77年、愛宕神社宮司に就任、同年、新潟総合学院を開校、理事長に就任。95年、学校法人新潟総合学院理事長、98年、社会福祉法人愛宕福祉会理事長、00年、学校法人新潟総合学園理事長、08年、同総長、医療法人愛広会理事長に就任。12年、日本ニュービジネス協議会連合会会長に就任。「異業種交流会501」の会長として起業家支援にも力を入れている。
池田 弘(いけだ・ひろむ)氏
NSGグループ代表、アルビレックス新潟取締役会長
1949年、新潟市生まれ。新潟県立新潟南高等学校卒業後、國學院大学で神職養成講座を受講し、東郷神社等で実習を重ねる。74年、神明宮(新潟市鎮座)の禰宜に就任(05年宮司就任)。77年、愛宕神社宮司に就任、同年、新潟総合学院を開校、理事長に就任。95年、学校法人新潟総合学院理事長、98年、社会福祉法人愛宕福祉会理事長、00年、学校法人新潟総合学園理事長、08年、同総長、医療法人愛広会理事長に就任。12年、日本ニュービジネス協議会連合会会長に就任。「異業種交流会501」の会長として起業家支援にも力を入れている。

池田:大賛成ですけど、イノベーションの担い手として考えるとやや心許ない気がします。私も高齢者の仲間入りなのですが、インターネットとかAI(人工知能)とか、最近の技術革新になかなかついていけません。年配の方々にはいろいろな経験があるので、それを地方創生に活かせるとは思います。しかしながら、ある部分では、そうした経験が逆に邪魔をすることがあるようにも感じています。

増田:そこは再教育の仕組みが必要です。年配の方々が新しいことを学んで前向きに取り組んでいけるようにしないといけない。そうでなければ地方創生の担い手や支援者になるどころか、新しい芽、若い芽を摘む、妨害する存在になってしまいかねないですから。

池田:一方で私は、地方創生の最前線で動く若い人たちをもっと増やさなければいけないと思っています。NSGグループでもUターン、Iターン組を積極的に採用していますが、大都市から地方に活動拠点を移す場合、賃金が下がったり生活環境が大きく変化したりといった様々な問題があります。こういうものが障壁となって最終的に移住に至らないケースもあります。

 一番の問題は賃金ですが、たとえば地方に移って給与が下がる分を3年くらい補填してくれるような公的な仕組みがあると、もっとUターン、Iターンが活発になると感じています。

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