ひとり外食で最も大事なことは店選びだ。「ぐるなび」や「食べログ」などで下調べをするのもいいが、同行者に迷惑をかける心配のないひとりメシなのだから、自分の勘を頼りに入る店を決めたい。その積み重ねがひとりで寛げる店を嗅ぎ分ける力を磨く。

 ひとり外食に向くのはどんな店か。当たり前だが、ひとり客が多い店である。団体客や宴会客で騒がしい店では、ゆっくりとした時間を過ごすのは難しい。ひとり静かに豊かな時間を過ごしたいなら、同類が集まっている店に如くはない。

 では、ひとり客が多い店かどうかをどうやって判断するか。間口の広さが判断材料になる。ひとり客はカウンター席を好む。そして間口の狭い店は、細長い店舗スペースを有効利用するためにほぼ間違いなくカウンター主体の作りになっている。

 最初からカウンター業態の飲食店に狙いを定めて入ってもいい。具体的には、寿司、天ぷら、焼鳥、モツ焼き、串揚げ(串カツ)、割烹、小料理、バーおよびダイニングバー、スペインバルやイタリアンバールといったジャンルの店である。熟練の料理人の仕事に見惚れながら、自分が本当に食べたいものだけを注文して出来立てを頬張る。ひとり外食の醍醐味である。

コの字型カウンターがお勧め

 コの字型カウンターの居酒屋や小料理店は、ひとり客に最適な店といえる。コの字型カウンターは、その構造上どこに座っても他の客の顔が見える。慣れない人にとっては、常に誰かに見られている感じで落ち着かないかもしれないが、この見られている感じが客にほどよい抑制を促す。

 客全員が店内空間を共有し、店の雰囲気を作っているという意識が生まれ、騒ぎすぎ、酔いすぎにブレーキをかけるのだ。また、顔が見えることで会話が生まれやすく、一見の客が常連客に溶け込むのを助けてくれる。コの字型カウンターの居酒屋を見つけたら、入ってみて損はない。

 カウンタータイプの居酒屋や小料理店、バーでは、一番奥まった席は、毎日のようにやってくる常連客の“指定席”となっていることがあるので、少しばかり注意を。店員に「こちらへどうぞ」と促された席に座るのが無難だ。

 カウンタータイプではない店でひとり客が落ち着けるのが、大衆食堂と蕎麦店だ。工場街やオフィス街、古くからある繁華街に「定食 鶴亀食堂」とか「大衆食堂 大吉屋」なんていう大きな看板を掲げた廉価な大衆食堂は、しっかり食うに良し、単品のおかずをつまみに酒を飲むにも良し。

 筆者のおススメは飲み屋街にある古い大衆食堂だ。こうした店の主要客は周辺の飲食店で働く人たち。プロである飲食店関係者に長年愛されてきた大衆食堂は、ほぼ100%うまくて安い。飲んで騒ぐような客はほとんどおらず、静かにハードボイルドに飲み食いできる。夕方早めの時間の蕎麦店もひとり客が多く、中年から初老の紳士たちが、板わさや海苔、卵焼きなどの簡単なつまみで日本酒の杯を上品に傾けている。

 「知らない店は値段が分からないので怖い」という問題は、店頭を観察すればだいたいの値段は予想できる。ディナーの客単価が2万円を超えるような店は、いかにも高級な店構えだし、予約なしで訪れる客もほとんどいないため、それと分かる。店頭にメニューが掲出されていれば、これも値段のアテがつく。問題はそうした分かりやすい材料がない場合だ。