私が投資を考える場合、創業者がこれから作る製品にどれだけ強い思い入れを持っているかを見る。ベンチャーキャピタルは製品に市場性があるかどうかを見て投資をするが、私は初期段階から投資をするので製品やサービスよりも創業者自身を見る。

 思い入れがある創業者なら自分の製品を何でも何度でも改良していく。そうしたことへのこだわりは日本の場合、グレートなレベルだ。ただし、こだわりと使いやすさのバランスが重要になる。

 凝りすぎると顧客のことを見失い、機能を次々に追加して複雑な製品にしてしまう危険がある。日本の開発者はその点に注意しなければならない。アップルのiPhoneにはボタンが一つしかなかった。これがソニーの製品だったらいくつボタンがついただろうか?

 日本の場合、スタートアップを支援するエンジェル投資家のコミュニティがまだそれほどないという指摘も聞いた。それなら大胆な人にとって大きな機会があるということになる。パイオニアになれば競合が少なくてすむ。

エンジェル投資のコツ

 エンジェル投資をするに当たっては少額で始め、2年程度、あれこれ学んでみることだ。私の経験ではグレートなエンジェル投資家になるには10年近い経験が必要になるが最初の2年間の学びがとても役に立つ。

 投資先の創業者の話を聞き、同じ会社に投資した人に会ってみる。こうした努力を重ねて人脈をつくらなければいけない。知り合いになった創業者や投資家に今、何が面白いか聞いてみよう。彼らが紹介してくれたスタートアップに少額投資をする。

 こういうことを2年間繰り返していくと20社近くに出資ができる。その中でこれはと思う企業、成功しそうな企業、数社への投資を増やしてみる。失敗しても少額であれば痛手はそれほどない。

 こうして学び、人脈を広げ、経験を積んだら、自分から人を紹介することができる。いかにして良いチームをつくれるか、スタートアップを成功させるカギはそこにある。開発者、営業、マーケティング、色々なプロフェッショナルが必要だ。資金がそれほどないなら、プロフェッショナルへの対価として株を渡すやり方もある。

 大胆に、ただし、スマートに、エンジェル投資をしようではないか。

(本記事は『2018世界はこうなる The World in 2018 (日経BPムック)』からの転載です)

ジェイソン・カラカニス(Jason Calacanis)氏

エンジェル投資家、LAUNCHフォーラム主催者。ニューヨーク出身。インターネット動向のジャーナリストを経て、ブログ広告ネットワークのWeblogsを起業、同社をAOLに売却。その後エンジェル投資家に転じ、投資家と創業者を仲介するLAUNCHフォーラムを主催。配車サービスのウーバーへのエンジェル投資家として著名。ポートフォリオは150社に上る。ブロガー、メールマガジンの発信者としても知られる。近著に『Angel:How to Invest in Technology Startups 』がある。

英The Economistの別冊「The World in 2018」日本版の独占翻訳権を日経BP社が獲得、「2018 世界はこうなる」として発行。40カ国で毎年発行される「The World in」は信頼性のある世界予測として高い評価を得ている。朝鮮半島や中国などアジア情勢、テクノロジーがビジネスやファイナンスに与える影響、といった記事を収録。