「商品・サービス数の急増」次々に商品やサービスを提供することになり、種類や件数が急増する。

 新サービスの開発スピードが桁違いに速くなり、顧客の要望に応え、競合に対抗するためである。

 「取引量の増大」増大する取引量は現行システムの処理能力を遥かに超える。

 スマートフォン決済やデジタルマネーが普及すると、顧客は24時間365日いつでもスマートフォンから取引の起動操作をするようになるためだ。金融機関が取引量を制御することが難しくなっていく。

 「新旧システムの維持」フィンテックなど新サービスは顧客対応や営業に関わるフロントオフィスの仕組みと位置付けられ、既存のバックオフィスのシステムとは異なり、新旧システムの並存を余儀なくされる。

 これまで金融機関は事務を効率化するため、事務を集中処理するバックオフィスを中心に、業務プロセスや情報システムを用意してきた。新しいフロントと従来のバックを連携できればよいが簡単ではない。多品種の複合商品サービスを管理する仕組みが必要となるが、現行のシステムにその余力はない。

 「担い手の交代」フロントで使用するテクノロジーも、その使い方も、コスト構造も従来と全く異なるため、それを主導する職員や協力するITベンダーの顔ぶれは変わる。

 わが国のソフト開発生産性の現状は世界から劣後しているが、フィンテックの広がりは新興ベンダーが飛躍する機会でもある。セキュリティを懸念する向きもあるが、日本独自の秘密分散割符技術などで、実務上許容レベルで防御することは可能だ。

 「有料化の検討」フィンテックサービスの多くは無料だが、人手や紙を使う対応を求める顧客が増えた場合、有料化を検討せざるを得ない。

 フィンテックサービスの開発コストは数百万円か高くても数千万円で済む。ところが、従来のバックオフィスと連携させると途端にコストも準備時間も膨れ上がる。また、古い商品・サービスを維持するために口座維持手数料が必要になるかもしれない。

2018年は経営判断の年に

 以上のように短期的に見ると、金融機関にとってフィンテックは収益増にもコスト減にもならない。

 それでも顧客中心、フロント重視という新たなビジネスモデルへのシフトは避けられない。既にメガバンクは1万人規模の社員数削減、店舗統廃合を含めた構造改革に着手した。

 フィンテックは金融機関のフロント、バック双方における構造改革を推進する原動力になる。フロントへの投資が優先され、フロントに合わせた新たなバックオフィスが用意されていくだろう。

 新旧の仕組みを併存したままではコスト削減にならない。規制当局は経営者に対し、新たに採用するものと捨てるものとの峻別をタイムリーに判断するよう、求めるはずだ。2018年は経営判断の年になる。

(本記事は『2018世界はこうなる The World in 2018 (日経BPムック)』に掲載された『情報技術で金融を一新、経営判断で成否は左右』を編集し、転載したものです)

島田直貴(しまだなおき)
金融ビジネスアンドテクノロジー代表。1971年大学卒業、日本アイ・ビー・エムに入社。金融業界担当の営業・営業企画・コンサルティング部門に勤務。アジア太平洋地域金融マネジメント・コンサルティング部門責任者を最後に退職、2000年4月に金融ビジネスアンドテクノロジーを設立。金融機関のlT 戦略・営業戦略立案を得意とし、数多くのコンサルティング、著作がある。

英The Economistの別冊「The World in 2018」日本版の独占翻訳権を日経BP社が獲得、「2018 世界はこうなる」として発行。40カ国で毎年発行される「The World in」は信頼性のある世界予測として高い評価を得ている。朝鮮半島や中国などアジア情勢、テクノロジーがビジネスやファイナンスに与える影響、といった記事を収録。