ナトリウムの呪い

 「もんじゅ」計画崩壊の元凶はナトリウムの漏洩。ナトリウムは水と反応すると激しく爆発する。だから、火災が起こっても水で消すことができないという厄介な物質だ。何故そんなものを使ったのか。ここで重要になるのが「高速増殖炉」に関わる第2のキーワードである「高速」。

 前述のように、高速増殖炉内では、ウラン238を原料として、プルトニウムが作られる。この反応は普通の軽水炉内におけるのと同じだが、違いは、プルトニウムの生産量だ。高速増殖炉では、使った以上のプルトニウムが生産されるのだ。

 これを可能にするためには、中性子が「高速」であることが必要。核分裂で生成される中性子は元々高速だが、普通の軽水炉には速すぎるので減速させる必要がある。軽水炉では、冷却材として水を使うのだが、うまいことに、水は中性子の減速材としても適しているのだ。

 一方、高速増殖炉を機能させるためには、中性子は高速のままであることが必要だ。そのため、冷却材は、中性子に対して減速効果が小さくその運動を衰えさせないものでなければならない。さらに、高速増殖炉では、出力が軽水炉よりもはるかに大きくなるため、熱伝導率の良いものが望ましい。

 こういう目的に適した物質の1つがナトリウムというわけだ。ただし、目的には適しているのだが、扱いが難しい。そのナトリウムが「もんじゅ」の命取りになってしまったのだ。

 「もんじゅ」ではナトリウムを使わざるを得なかったことに根本的な問題があり、さらに言えば、プルトニウムを使う高速増殖炉という原子炉そのものが無理だったとも言える。実際、世界には、高速増殖炉の計画はいくつかあったが、現在でも推進しているのはフランスとロシアだけだ。

原爆の材料を蓄積してはならない

 前述のように、普通の軽水炉からもプルトニウムが生産される。そのため、日本にはすでに大量のプルトニウムが蓄積されている。

 ここで、問題になるのが、プルトニウムが持つ第2の顔=原爆の材料だ。長崎に投下された原爆で使われたプルトニウムの量は6.1kg。各種データによると、現在の核兵器に使われているのは4~8kgという。もの凄い破壊力からは信じられないほどの少ない量だ。

 それに対して、日本のプルトニウム保有量は実に47トン。1発当たり6kgのプルトニウムが必要として、単純計算で8000発近い原発を作れる量だ。プルトニウムの純度が違うので、実際に作れる量はもっと少ないのかも知れないが、厖大な保有量であることは間違いない。

 この保有量に対して海外から批判の声が上がっている。2015年10月20日、国連総会第1委員会(軍縮)において、中国の傅聡軍縮大使は、「日本が保有している分離プルトニウムは千発以上の核弾頭を製造可能な量に達している」と主張し、日本を非難した。

 仮に「もんじゅ」を稼働できたとしても、この問題はなくならない。何しろ、消費した以上のプルトニウムが生産されてしまうのだから。