「地元」の定義も崩壊

 原発に関する「地元」の定義も揺らいでいる。高浜原発は福井県にあるが、今回の仮処分の決定を行ったのは滋賀県の大津地裁。「立地自治体」である福井県高浜町の住民の間では「外から」の影響に反発する声も上がっているが、それは筋違いだ。

 原発被害は自治体の境界線でストップするわけではない。具体的に言えば、福井県の北東部、石川県との県境にある北潟湖は、高浜から直線距離で100km程度ある。それに対して、滋賀県との境まではわずか30km、県庁所在地である大津市(及び京都市)まででも60kmしかないのだ。100km圏内には大阪、神戸も入ってくる。今回申立した住民は原発から約70km以内に住む人達だ。

 このような状況は全国共通だ。愛媛県の伊方原発3号機が夏までには動きそうだが、広島県から停止申請が出されている。四国電力伊方原発1~3号機の運転差し止めを求め、広島・長崎の被爆者18人を含む9都府県の67人が2016年3月11日、広島地裁へ提訴した。原告の一部は、3号機の運転差し止めを求める仮処分も申し立てている。

 広島市から伊方原発までは南に約100km。福島事故の後、伊方原発の運転差し止めを求める訴訟は松山地裁に続き2例目で仮処分の申し立ては初めて。高浜の例が繰り返されると、伊方3号機も一旦動いて即停止、ということになりかねない。

 青森県大間町で建設中の大間原発に対しても、2014年4月3日、対岸北海道の函館市が国と電源開発を相手取って建設差し止めを求める訴訟を起こしている。このように見てくると、原発において「立地自治体」という概念には全く意味がなくなった。

 筆者は、温暖化対策等のため、ある程度の原発は必要と考えている。しかし、現時点ではタイミングが悪く、規制基準にも不備がある。まずは、福島が収束するまでは一切稼働しないこと。さらに、テロ対策、避難経路・場所の確保、最終処分場の選定まで含んだ規制基準に移行する。そして、しかるべき時期に、そういう基準に合格した原発のみを稼働するならば、国民の支持も増えるはずだ。

高浜原発、伊方原発の位置と周辺への影響
高浜原発、伊方原発の位置と周辺への影響
出所:筆者作成
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