テロ対策、避難設備、最終処分場の不備

 では、規制基準には何が足りないのか。それは、テロ対策、避難設備、それから最終処分場に関する規制である。

 まずは、テロ対策。アメリカの9・11同時多発テロ以来、航空機を使ったテロは架空の話ではなくなった。日本の原発はすべて海に面しており、特に若狭湾は、14基の原発がひしめく世界最大規模の原発集中地域である。

 原発を攻撃しようとする勢力にとっては、日本海側から航空機による自爆テロを仕掛けることは難しいことではない。また、沖合や、陸側からのドローンによる攻撃も簡単だ。その対策として、レーダー網や、防空体制を構築するとなったら非常に大きなコストがかかる。

 次に避難者対策。福島の住民は、事故の後、先行きも分からぬままに避難し、学校の体育館などの固い床の上で、毛布一枚で避難生活をすることになった。その後、多くの人たちが仮設住宅に移住したが、夏は蒸し風呂、冬は「室内でも氷が張る」と言われるほどの状態だった。他の町に移住し、帰郷を諦めた人たちも大勢いる。同じことは全国どこの原発でも起こり得ることだ。

 既に稼働している川内原発(鹿児島県)や稼働準備中の伊方原発(愛媛県)の周囲には、避難所どころか、避難経路の確保さえ危うい地区がある。避難路を確保し、避難してきた人達が普通の生活ができるような住宅を準備するとなると、ここでも莫大なコストがかかる。

 最後に、放射性廃棄物の最終処分場の問題。原発は「トイレのないマンション」と言われる。非常に高価で立派な設備ではあるが、排泄物(放射性廃棄物)を処分する設備がない。

 そのため、運転期間の終わった原発に対しても、現状では本格的な廃炉は不可能だ。帳簿上の廃炉は簡単だが、解体や廃材・使用済み燃料の処分といった実際の作業を実施するメドが全く立っていないからだ。

 このような状況は日本だけではない。世界中でも、現時点で使える最終処分場は一つもなく、建設中のものがフィンランドとスウェーデンに1カ所ずつあるだけだ。廃炉に関わる最終処分費用は算定のしようもない。

 このように、空中テロ対策、避難所の整備、最終処分等の対策費を含めると、原発による発電コストは、すべての電源の中で間違いなく最高になる。「原発は低コスト」という神話は崩壊した。

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