3月9日、日本中のエネルギー関係者に衝撃が走った。関西電力の高浜原発(福井県高浜町)3号機と4号機について、大津地方裁判所(山本善彦裁判長)が、運転の停止を命じる仮処分の決定を出したのだ。裁判所が稼働中の原発の運転停止を命じたのは初めてのこと。

3号機と4号機について、運転中止の仮処分が下った高浜原発(写真:アフロ)
3号機と4号機について、運転中止の仮処分が下った高浜原発(写真:アフロ)

 筆者もこの仮処分申請に注目していた一人だ。心情的には住民側の味方だが、「恐らく却下されるだろう」と考えていた。ところが、蓋を開けてみると、停止を命ずる仮処分。このニュースを知ったのは、あるシンポジウムに参加していた時。インターネットで見て、危うく驚きの声を上げそうになった。

 仮処分とは、暫定的に行う手続きで、通常の訴訟で争っている時間的余裕がない時等に出される。「仮」と名がついているから軽い決定と思うかもしれないが、実際は全く逆で、実に重いものだ。

 まず、決定は直ちに効力を発揮するので、命令を受けた側は即実行しなければならない。そのため、関電は翌10日午前10時ごろから3号機の停止作業に入り、その日の夜に停止させた(4号機は仮処分以前にトラブルで既に停止していた)。

 関電は、「仮処分の決定は到底承認できない」として、3月14日、異議と仮処分の執行停止を大津地裁に申し立てた。しかし、ここでも仮処分の重さが壁になる。執行停止の可能性は低く、却下されるものと見られている。

 異議については、審理されることになるが、審理期間中も仮処分の効力は継続する。異議審は6~8カ月かかるとみられるので、少なくともその間は、3、4号機の停止は続くことになる。

 高浜原発3、4号機に対する差し止め仮処分は、2015年4月にも福井地裁(樋口英明裁判長)から出されている(再稼働の差し止め)。そのときも、関電は異議を申し立て、8カ月後の12月に決定が取り消されている。その後、高浜原発3、4号機は再稼働に至った(下表参照)。

 今回の大津地裁の場合も、同様の流れになると見られているが、原発に対する国民の目は厳しさを増しているので、今回は、決定が取り消されるかどうか不明だ。

高浜原発(3、4号機)経緯
高浜原発(3、4号機)経緯
出所:マスコミ情報などをもとに筆者作成
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