安倍首相は改憲を公言しないが…

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 選挙戦が進む中で政府にとって大きなリスクとなっているのは、安倍首相が自らの最終目標を声高に口にしてしまう事態だ。つまり参議院で議席の3分の2を確保することである。実現すれば、米国が1946年に起草した日本の平和憲法の主要条項を改正すべく国民投票を発議できる。

 安倍首相にとって憲法改正は積年の悲願だ。政府は選挙権年齢を引き下げた。これは改憲に向けた国民投票を可能にする法案を支持する条件として野党勢が求めたからだ。日本が永遠に戦争を放棄することを定めた第9条を、安倍首相は時代遅れで危険なものだと考えている。だが憲法改正に反対する有権者は多く、安倍首相は今回の選挙運動においてこの願望を前面に出さずにいる。

 衆議院では自民党と公明党の連立政権がすでに議席の3分の2を確保している。両党は2013年の参院選で大勝しているため、今回の選挙でわずか77議席を獲得すれば参議院でも総議席数の3分の2に手が届くことになる。つまり、前回と同じだけの議席数をとればいい。そうすれば現在10議席を保有する2つの右派小党の支持を取り込むことで改憲できる。

 こうした展開になっても、安倍首相にはメリットがほとんどない可能性もある。憲法改正に対する国民世論の反対は根強く、たとえ改憲手続きに着手できたとしても、首相が望み通りの結果を得られないこともあり得る。公明党もまた、第9条の改正には抵抗するだろう。

 だが残念なことに、ほとんどの日本人――彼らの最優先課題はあくまでも経済――にとって、こうした障壁は改憲を阻むものとはならないだろう。選挙が終われば、政府は持てるエネルギーの大半を憲法改正に注いでいくつもりでいる。

© 2015 The Economist Newspaper Limited.
Jul 2nd-8th 2016 | TOKYO | From the print edition

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。