(前編から読む

 英国のEU離脱、アメリカのトランプ大統領の誕生、フランスでの極右勢力、国民戦線の台頭、ポーランドなどの政治の保守化、そして欧米全体を覆う反イスラム主義。池上さんと増田さんの著書『なぜ、世界は“右傾化”するのか』とお二人の解説によれば、いま世界で起きているのは、言葉通りの「右翼化」ではなく、極端な一国主義の台頭である、と。そこで連想するのが、日本における移民問題です。少子高齢化の進む日本で、保守・革新どちらの側にも、積極的に移民策を進める話はなかなかでてきません。

増田:まず、日本人のマインドに、移民や難民の受け入れがなじまないという実態があります。

 地続きで隣国と接していて、たくさんの植民地をアジアやアフリカに有していたヨーロッパ各国や、そもそもが移民国家であるアメリカでは、絶えず移民がやってくるのは当たり前でした。一方、島国国家の日本の場合、文化や宗教の異なる外国人がどんどん押し寄せる、という経験をしていません。だから、「移民政策が必要かもしれない」と頭では理解していても、全く異なる文化や宗教を持っている人たちとお隣さんになる、ということに肌身では納得できない側面があるでしょう。結果、人手不足にもかかわらず、インドネシアやフィリピンなどからやってきた人たちに介護されるのに抵抗感を覚える、という人たちが少なくなかったりする。

 こうした日本人の意識を前提に、海外からの移民を受け入れるのなら、どういう形でなら受け入れやすいのかを考えていかないとならないと思います。日本の人口が減少し、高齢化が進むのは、逃れられない事実ですからね。

日本も移民局をつくるべき

池上 彰(いけがみ・あきら)/1950年、長野県生まれ。1973年から2005年までNHKに記者として勤務。2005年からフリーランスのジャーナリスト。2012年から東京工業大学教授に。2016年、東工大を定年退職し、名城大学教授に。東工大でも特命教授として引き続き講義を受け持つ。今年度は計7つの大学で教壇に立つ。(写真:陶山 勉、以下同)

池上:今、コンビニエンスストアに行くと、店員の多くが外国人です。物流センターなどで働く人も外国人が多いと聞きます。介護や福祉の専門学校や大学では、多数の留学生を受け入れており、彼ら彼女らがそのままこうしたアルバイトについているケースも見受けられます。また、農村や漁村には、技能研修生という名の、事実上の移民が入っています。

 前回、日本では公式には移民政策をとっていないと言いましたが、一方で、留学生や短期の労働者として日本で働いている外国人は数多くいるのです。でないと、日本の「現場」は人手不足で立ち行かなくなってしまう。つまり、建前と現実に大きな乖離が生まれているのです。ここで、日本のずるい建前と本音の使い分けが透けて見える。人手不足だから外国人に頼るしかない。でも、本当は入れたくない。だから、建前としては認めていないけど、移民という名目じゃないかたちで、入ってきてもらおう、と。

 個人的な意見を言えば、私は日本も移民局をつくるべきだと思います。今は、入国管理局が難民の審査をしていますが、彼らの仕事は「不正に入ってこようとする人を入れない」というのが基本スタンスです。つまり、入れることが前提ではなく、入れないことが前提となっている。当然、入国審査は厳しくなる。日本の現実と未来を見据えたら、海外からの移民を受け入れることを前提とした役所をつくるべきでしょう。

増田:ヨーロッパの中でも日本と同じ島国国家イギリスの例をとってみましょう。

 イギリスの国民が、なぜEUを離脱するBrexitの道を選んだのか。理由のひとつは、「移民に職を奪われた」という声が大きかったからです。90年代にEUができて、域内の移動が自由になると、かつての東欧各国から職を求めてヨーロッパの先進国に移民がやってきました。イギリスにもポーランドをはじめたくさんの東欧移民がやってきました。