池上:最相さんは、ずっとフリーでやってらっしゃいますよね。

最相:ええ。どこにも所属していません。所属せずにノンフィクションライターの仕事をやっている、というのが、自分の強みだと思うことにしています。池上さんも、NHKをやめたあとはフリーで、でもここしばらくは東工大学教授で、この春には退任されてまたフリーになられる。ご自身のこと、お書きにならないんですか? マネジャーもつけず、たくさんの連載を抱え、次々と書籍を執筆し、テレビの仕事をされ、大学でも教える。常人とは思えないお仕事のされ方の秘密をぜひ知りたいです。

池上:いえいえ、語ることなどございませんよ(笑)。

最相:身体的な鍛練もされているのかなあ、と。必要だと思います。端から見ていると、池上さんはアンドロイドなのかと思います。

池上:あえていうならば、どの仕事も楽しいんです。楽しいからストレスがたまらない。だから、たくさんやっても大丈夫、ということがあります。いやな仕事は受けてないので、その意味ではストレスフリーなんです。

話しながら磨くか、自分の中で発酵させるか

最相:でも、これだけ仕事がたくさんあると、アシスタントや取材補助をしてくれるリサーチャーをつけても良さそうな感じが。

池上:何をおっしゃいます! リサーチって取材のことですよね。現場取材が一番面白いのに、なぜアシスタントやリサーチャーにその面白い仕事をあげなければいけないのか! おいしいところは自分でいただきます(笑)。
 そうそう、最相さんが次に「人生を賭けるテーマ」、もう決まっていますか?

最相:私の場合は書下ろしがほとんどなので、口にすると空気が抜けてしまって自分で自分に飽きてしまう。ですから書籍のかたちになるまでは広言しない、アウトプットしない、と自分で決めています。

池上:その点は、私と方法論が逆ですね。私の場合、特ダネは別として「こんなことをいまやっているんだ」といろいろなところで話しながら自分の頭の中を整理したり、相手の反応を見て説明の仕方を変えたりしながら、コンテンツをブラッシュアップしていきます。もちろん、最相さんのように、黙って自分の体の中で何か発酵するというノンフィクションの書き方もよくわかります。

最相:TwitterとかSNSの類はいっさいやりません。空気が抜けちゃうので。

池上:あれはだめですね(笑)。私もやりません。やる暇があったら取材したり本を読んだりしてインプットを増やし、自分の中で整理したり考えたりするための時間に使いたい。ともあれ、最相さんの中から発酵してでてくる「次回作」を心待ちにすることにいたしましょう!

(了)

構成:片瀬京子

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