最相:私が過去に取材させていただきその後も交流させていただいている研究者の方々の中から、今の学生たちがなかなか会えないであろう人たちを意識して、選びました。最先端の研究をされている方は東工大にたくさんいらっしゃるでしょうから、それよりはある分野の研究の歴史を体現しているような方に来ていただきました。

池上:そんな専門の方々に、学生の前でインタビューして見せたわけですよね。くわしくはぜひ『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』をお読みいただきたいのですが、最相さんの研究者へのインタビューぶりを見て、学生たちも「インタビューってこうやるんだ!」「取材ってこうやってやるんだ!」と普段の授業では味わえない新鮮な体験を得たでしょうね。

最相:さあ、どうでしょう。学生たち、そこまで意識していたかな……。

池上:ああ、なるほど。そのインタビュアーが上手いかどうかは、インタビューの仕事をやるようになって初めてわかるんですよね。いまの私の感想は、プロが他のプロの仕事ぶりを見て「うむ、お主できるな」という類のものだったかもしれません(笑)。

「終わってからわらわらと」「空気、読みすぎです」

最相:学生たちには、さまざまな研究者のお話をかなり楽しんで聞いてくれた、という実感があります。ちょっと残念だったのは、日本の学生の典型にもれず、やはりなかなか質問が出なかったんですね。出席カードに質問や感想を書いている学生たちはいたので、カードを回収して、そこから質問をピックアップしてゲストの研究者に投げかける、という工夫をしたりしました。

池上:東工大の学生、授業はちゃんと聞いているんですが、私の授業でも質問をしてくるのは限られた同じメンバーですね。しかも留学生が多い。今回の授業の対象は、1年生から4年生まですべての学年だったんですか?

最相:本当は2年生が対象だったんですけれども、1年生からおそらく留年している学生までいたと思います。

池上:実は1年生向けの授業では学生の手がどんどん挙がり、質問も出るんです。それが2年生以上になると、こちらが授業中に指すときちんと答えられるんですが、自発的に質問をする学生の数ががくんと減ります。だんだん空気を読むんでしょうね。

最相:それ、他の大学でも同じ傾向があるそうです。学年が上がるごとに学生が質問をしなくなる問題について、別の大学の先生としたことがあるのですが、最近はみんなTwitterなどSNSをやっていますよね。そこで、「あいつ、こんな質問をしたよ」と書かれて拡散されたりすることを恐れているのでは、とおっしゃっていました。「あんなことも知らないのか」と言われるのが嫌なのではないか、と。

池上:それは、すごくよくわかりますね。空気、読みすぎなんです、日本の学生は。

最相:1年生は純粋に疑問を覚えた時に質問をしますが、そのうち、質問するのは1つのアピールになる、ということで、学年が上がるとだんだん周囲を意識してしなくなってしまう。私の講義のように1年生から4年生までいる授業だと、「1年生、2年生がいるところで4年生はおいそれと質問はできない」という思いもあるのかもしれません。でも、やっぱり疑問はあるし、聞きたいわけですよ。だから講義が終わってからわらわらと質問しにやって来た学生はいました。

池上:そうそう。個別には結構いい質問をしてくるんですよ。だったら最初から授業のときに質問してよ、みんなの前でしてくれれば共通の話になってとても有意義なのに、と言いたくなる。

(次回に続く)

構成:片瀬京子