池上:いまの話を聞いてひとつ思い出しました。2012年4月、私が東工大で教えるようになったときのことです。入学したての1年生に「君はどうして東工大を選んだのかな」と聞いたら、「大学入試センターの試験結果で決めました!」と身もふたもないことを言われて、あちゃーと思ったんです(笑)。

最相:(笑)。でも大学の入学当初は、案外誰でもそうかもしれませんね。自分がいかに素晴らしい環境で学んでいるのかなんて時間がたってからでないとわからない。池上さんも著書『学び続ける力』で、「やればやるほど、自分が何も知らないことに気がつく」と書かれていましたが、私自身も学生時代はのほほんと生きていました。おそらく、人生で今が一番勉強している時期だと思います。

いつ学ぶか、いつ決めるか

池上:よーくわかります。私も今、一番勉強しています。大学時代はというと……。うん、東工大生のことをまったく笑えません。

最相:ですから、入学したての東工大生が「テストの点数がよかったから入りました」と答えても正直な答えなんでしょうね。

池上:ただ、東京大学の理系の場合は入学時の分け方は理Ⅰ、理Ⅱ、理Ⅲとざっくりしていて、みんなが医学部に進む理Ⅲを除くと、入ってから細かな進路を決めることができます。それに対して、東工大の場合は入学の時点で、第1類から第7類まで7種類に分野が細かく分かれており、最初から専攻分野があるので、ある程度は方向を決めてきているのではないか、と。

最相:類ごとに入学して2年生で所属学科が決まるわけですよね。

池上:1年生のときの成績で希望の学科に行けるかどうかが決まります。

最相:どうなんでしょう。せめてどの道を選択するかは、3年生くらいでいいのでは、という気がします。というのも、理系の研究者の世界は、早く決めたら決めたで一度研究室や師が決まるとそこからなかなか他へ移れないしがらみもありますよね。大学1年生に道を決めろ、というのはけっこう厳しいなあ、と。

池上:たしかに。学部で一度研究室が決まったら大学院までずっと同じ、というのが当たり前ですからね。もう少し、あとから変えられるような仕組みがあってもいいのかもしれません。実際に講義してみての感想はいかがですか。

最相:毎回ほんとうに大変でした。毎週ネタを仕込まなければいけないので、週刊誌でノンフィクションの連載をずっとやり続けているような感じです。池上さんはジャーナリストとしての仕事をめいっぱいされながら、週2コマ教えている。超人的だと思いました。ただ、学生たちはとてもまじめに、真摯に講義に向き合ってくれたと感じました。ですからレポートのテーマを考えるのも楽しかったです。

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