部下の仕事が計画通り進んでいないと、社長や上司は愉快ではありません。思わず「なぜ~しなかったんだ」と言いたくなるでしょう。でも、そうした過去形を含む否定形の質問を口に出して部下に質問してしまうと、マイナスの結果しか生まれません。

 「期待して任せたんだから、それくらいの仕事はもう1人でどんどん進めてくれよ」と嘆きのニュアンスが言外に伝わり、「残念な社員のレッテルを貼られたのではないか」と部下は感じるのです。

 すると、部下は反射的に防衛本能が働いて、できなかった理由を並べ立てることになります。これでは、いくら成長対話に時間をかけても打開策や解決策はなかなか生まれません。話し合っているときの雰囲気も悪くなり、成長対話をする意味すらはっきりしなくなります。

質問の視点を過去から現在や未来に変える

 仕事が成功したにせよ、失敗したにせよ、起きた現実を変えることはできません。むしろ、大切なのは、現実を踏まえて今後どのようにしていくかです。つまり、視点を過去ではなく、現在と未来に向けるのです。

「現在形や未来形で質問するだけで部下の答えは前向きになる」と説明する東川氏
「現在形や未来形で質問するだけで部下の答えは前向きになる」と説明する東川氏

 スムーズに視点を切り替える方法があります。それは、現在形と未来形で必ず質問すること。例えば、「今、どんな仕上がりかな」と聞きます。もし、この段階で計画通りに仕事が進んでいないようなら「今後どうしていこうか」と続けるのです。これなら、部下のこれまでの行動を否定していないので、まず雰囲気が悪くなりません。

 しかも、話題が未来のことになるので、既に起きたことに対する言い訳が部下から減り、話が前向きになります。つまり、現状を率直に受け止め、今後どう改善していくか自主的に本人に考えさせ、「現状を変えよう」という気にさせていくわけです。

次ページ 未来志向の質問が前向きな思考を生む