「合区」問題は司法判断にはなじまない

 これに対する政治の回答のひとつが「合区」なのである(やっと出てきた)。合区とは、行政区分を無視して、人口の少ない選挙区を「合」わせてひとつの選挙「区」にしたものである。2016年夏の参議院選では、鳥取と島根、徳島と高知が合区となり、最大格差は3.08倍まで縮まった(しかしそれでも全国で「一票の格差」訴訟が提起され、10判決が「違憲状態」、6判決が「合憲」となった)。

 合区の選挙区からは鳥取と高知を地元にする議員が選出されなかった。全国知事会は昨夏、「参議院選挙における合区の解消に関する決議」という声明文を発表し、合区の解消と「将来を見据え、最高裁の判例を踏まえ憲法改正についても議論すべきと考える」と主張した。

 ただ、合区を解消して、各都道府県から最低ひとりは参議院議員を出すとすると、憲法に抵触する可能性がある。憲法43条1項にこうある。

《43条1項 両議員は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する》

 各都道府県から必ず出すとすれば、それは「地域代表」ではないのか。「全国民の代表」と言えるのか、という問題である。また当然、定められた議員定数を配分するという前提から考えれば、現実的には「一票の格差」は是正されず、憲法の平等原則との調整も必要になってくる。

 「合区」の解消をしたければ議員定数を増やせば良いとの考え方もあろうが、財政支出面での合意が壁になる。一方、参議院を「地域代表院」とするならば、各都道府県選出議員は同数が基本になる。各県最低1議員のような選び方だと、やはり「一票の格差」は生じるだろう。いずれも、中途半端である。

 「投票価値の平等」は都市住民の求める声であり、「合区解消」は疲弊した地域の声を中央に届けたい地方住民の声である。国民の価値が対立しているところであり、これは司法判断ではなく、政治の場で決着をつけねばならない。もし合区を解消して参議院を地方選出議員の場とするならば、現在の衆参両議院の関係も見直さなければならないだろう。

 「一票の格差」問題は国会議員とはどういう存在なのか、衆議院と参議院の性格はどう違うのか、考える契機になる。

*1月19日公開「改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非」に続く

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