西野:同じ世代で横につながることも必要ではないでしょうか。自分が働いている役所だけで問題を抱え込むのではなく、他の役所の職員と情報交換しながら、より良い問題解決の方法を探る。今後はそんな動き方が求められると思いますし、私自身、多くの学生を役所に送り出している大学教師として、そうした連携の場を自治体の皆さんと一緒に、つくっていきたいと考えています。

地方も切磋琢磨しなければ……

深谷:連携という考え方には大賛成です。私は、地方公務員を総合職と専門職に分けるのも、選択肢の1つだと考えています。例えば観光事業を極めたい人は、他の自治体の観光担当者と密に情報交換し、切磋琢磨もしながらベストな施策を打つ。他の自治体に一時出向し、観光のノウハウを共有しても面白いでしょう。一方の総合職はマネジメント力を極めるのです。都道府県単位、あるいは国で、そうした公務員の育成システムを構築してほしいですね。

早川卓也・いすみ市参事(千葉県)

早川:いすみ市では、2015年に周辺の市、町と一緒にフィルムコミッションを立ち上げました。これは映画やテレビドラマ、コマーシャルなどの撮影を誘致し、まちを活性化していくための組織です。こうしたことが実現できるかどうかは、リーダーシップを取る人がいるかいないか。自分の市のことだけを考えるような人だとできない。公務員の中から、広い視野、高い視点を持ってリーダーシップを発揮できる人がたくさん現れるといいですね。

小濱哲・丹波山村前顧問(山梨県)

小濱:その意味では、この派遣者制度は大きな意義があると思っているんです。これまで中央官庁が日本を良くしようといろいろな施策を打ってきたけれど、なかなか地方は動きませんでした。唯一動いたのが、田中角栄の日本列島改造論くらい。
 けれど、今回の地方創生に対する国の危機感は相当強い。何としても地方に動いてもらわなければと考え、この派遣者制度をつくって霞が関の魂を伝えさせた。特に、民間企業の人が国のお墨付きを得て、地方のまちづくりのために散らばるという試みは、これまでありませんでした。産官共同の新しい形ですよ。地方自治体のあり方は、今まさに刻々と変化しています。そうした変化を楽しむことができる人が、これからの公務員に求められる資質ではないでしょうか。

(本記事は『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を再編集しました)

日経BP社では『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を発行しました。本書は内閣府地方創生人材支援制度の第一期派遣者たちによる、地方創生のリアルな現場の克明な記録です。派遣者たちは地方で何を見て、どう感じ、どんなことに取り組んだのか。「地方創生」の歴史はここから始まります。くわしくはこちらをご覧ください。