住民の人たちが「気づく」というのが、地方創生の第一歩なのかもしれませんね。まちの未来の姿に気づく。自分たちの強みに気づく。どちらも大切なことです。

深谷信介・桜川市参与(茨城県)

深谷:まちには、高齢者もいれば若者もいます。年金生活をしている人もいれば、バリバリ働いている会社員もいます。いろいろな人がいる中で、どうすれば気づいてもらえるかということを考えながら、とにかくいろいろな人に会ってきました。まちによって違うのでしょうが、私の体験では、長年家業を営んでいる人は、比較的すっと共感してくれました。やはり、代々継いでいくことの大切さと難しさが、体で分かっているのでしょう。

西野由希子・常陸大宮市創生特別顧問(茨城県)

西野:自分のまちの強みがはっきりしたら、元気が出るし、それが目に見える形になり、まちにとって何よりの価値を持つものだと分かると自信になります。その魅力は経済的に豊かであることだけではなく、伝統文化や歴史、食など文化的なものも含まれます。

 茨城県常陸大宮市でもそうでしたが、総合戦略をつくる過程で、どこの市町村も、自分のまちの強みは何か、真剣に議論したと思います。そうして自分たちの強みに気づき、言語化することの意味はとても大きかったと思います。

高齢者に合ったスピードで変えていく

派遣先で、「都会から来た人にうるさく言われたくない」と反発されるようなことはありませんでしたか。

伊藤:私は、山形県寒河江市のサポートをしていますが、最初のうちは住民の方とお酒を飲んでいると、たぶん、そういう目で見られているんだろうなと感じた瞬間は何度かありました。

 そこで私は、別の自治体を例として示し、何もしなければこの規模まで人口が減るんですよ、と分かりやすくイメージできる資料を持って、最初に年配の人たちを重点的に回りました。その土地に長年住んできた年配者に、まちづくりの考え方を変えてもらうのは大変だからです。彼らに「よし、やってみるか」と思ってもらえれば、それから若者を巻き込んでも遅くはありません。

 地方創生において最も避けなければならないのは、世代間闘争になることです。人口減少対策のために若者にお金を使うと、多かれ少なかれ、高齢者支援が割を食うわけです。それでも人口減少対策は必要だと高齢者に納得してもらわないと、地域において世代間で分裂してしまうので、その点には気を使いました。

 
小濱哲・丹波山村前顧問(山梨県)

小濱:人口規模が大きいまちのほうが、仕組みで動かすことができる分、地方創生に向かって走り出すことは比較的簡単かもしれません。私が関わった山梨県丹波山村は、人口600人。小さなまちになればなるほど一般に高齢者の比率が高い。保守的な考えの人が多いので、意識を変えるには時間がかかります。

 だから私は、「高齢者でもできるまちづくり」というコンセプトを掲げ、高齢者に合ったスピードで、まちを変えていくことにしたんです。矢継ぎ早に施策を打つことは控え、とにかくゆっくり、ゆっくりと。「お子さんやお孫さんが戻ってきてくれる、新しいまちをつくりましょうね」と言いながら、その実現に向けて、手と手をつないで引っ張っていくイメージです。

藤井:各地の市や村はこれまで国から「あれをやりなさい、これをやりなさい」と指示され、その通りにするという仕事のやり方を続けてきました。だから、自分で考えることに慣れていません。まだ地方創生の取り組みは始まったばかりで、どのまちも成果はこれからですが、自らの力で考えようと模索しているまちには、既に変化が起きています。例えば、外部の意見を進んで聞いたり、民間と協力したり、若者の力を生かしたりして頑張っているまちは、空気からして違う。

 私が携わっている秋田県湯沢市では、いろいろな審議会に若い市民をどんどん登用して、新しい風を吹き込んできました。そうすると年配の市民も、こういう考え方もあるんだなと気づくんです。

 今の人口構成では、どうしても高齢者中心に物事が決まってしまいます。けれど、未来のことを考えるのですから、若者の声を取り入れるのは不可欠でしょう。湯沢市では、まちづくりに若者の声を十分反映させるために、例えば各種審議会の委員構成のルールだったり、市民アンケート実施に際しての配慮だったりなど様々な仕掛けをビルトインするための条例を検討しています。これまで声が出せなかった人に出してもらい、意思決定方法を変えることで、地方創生に向けた動きが本当の意味で自走し続けることができるのではないでしょうか。