エルミタージュ美術館で見覚えのあるアレに出合う

 サンクトペテルブルク・モスクワ駅(正確には、サンクトペテルブルク・モスコフスキー駅)には10時40分に到着。さて、ここからエルミタージュ美術館までは約2.5kmある。地下鉄なら乗り換え1回で着くが、歩いてもさほどの距離ではない。

 「豪華なホームの地下鉄も乗ってみたいけど、はじめての町なので、きょろきょろしながら歩こう!」

 私のなかで、「ぶら散歩」派が「乗り鉄」派を押し切った。ところが、この日は遅くなってから雨が降るという天気予報が外れて、歩いている途中に本降りになってしまった。雨宿りをしたり、傘を求めてさまよった末に、大通りにあるベネトンのブティックで購入するといったハプニングもあったりして、エルミタージュ美術館に入館したときは12時になっていた。

よく言われるように、サンクトペテルブルクの町は垢抜けていてヨーロッパの町という印象を受ける
よく言われるように、サンクトペテルブルクの町は垢抜けていてヨーロッパの町という印象を受ける

 エルミタージュ美術館については、すでに語り尽くされているので、あえて私がつまらない解説を加えることはないだろう。とてつもなく広いうえに、内装から調度品、絵画に至るまで、それはそれは豪華絢爛なもので、わが家の女帝もいたくご満悦のようであった。ただ、不覚にもバッグにガイドブックを入れたまま荷物預かりに出してしまったために、どこをどう歩いているのかわからず、これだけは見ておこうと思っていたカラヴァッジョの絵に、とうとうたどり着くことができなかった。

"本物"の女帝、エカチェリーナ2世の肖像画。さすがに貫祿がある
"本物"の女帝、エカチェリーナ2世の肖像画。さすがに貫祿がある

 入口はただでさえ人であふれているのに、午後1時をまわると食事が終わったためか、さらに次々と人が押し寄せてくる。話している言葉も千差万別。そして、ロシアに来て初めて日本人の団体に会った。モスクワでは、3泊して結局1人旅のおじさんを2、3人見ただけだったのに……。30人ほどの団体のメンバーは、大半が60代以降と見えた。

 「北欧とエルミタージュの旅ね。オーロラを見てきたのかも」とは妻の推測である。

ロシアの小学生はみんなおとなしく、先生の話をよく聞いていた
ロシアの小学生はみんなおとなしく、先生の話をよく聞いていた

 美術館の一角では、特設の展覧会が開かれていた。不思議な形の建物の模型が並んでいるなあと思ったら、ザハ・ハディド女史の建築を紹介する展覧会ではないか。

 通りかかったついでに立ち寄ってみると、どこかで見たような模型が……。あの新国立競技場のデザイン案の模型である。なんだか、不遇だった旧友に異郷の地でばったり会ったような不思議な感覚だった。

ここでは新国立競技場が生きていた!
ここでは新国立競技場が生きていた!

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