「ジーパンない?」と聞かれたあの日の思い出
何十年も前に通ったことのある道を久しぶりに歩いていると、ふとしたことで当時の記憶がなまなましくよみがえってくることがある。クレムリンの見学を終えて広い道を歩いているときに、ふと34年前のささやかな出来事を思い出した。
クヴァスの自動販売機(詳しくは、「イカくん」の謎とロシアのソウルドリンク)で小銭がなくて困っていたら、近くを通りかかった私と同じ年格好のお兄さんが、足りない分を出してくれたことがあった。5円か10円分くらいだったかと思う。彼は、珍しく英語を話せた。

「へえ、日本人なんだ。モスクワは初めて? ふーん、今晩から夜行列車でポーランドに行っちゃうんだ。ところでジーンズ持ってない?」
当時のロシアではジーンズが貴重品なので、旅行にジーパンを何着か持ち込んで小遣い稼ぎをしたという話を聞いたことがあった。私はジーパンを持っていかなかったし、だいたい当時のソ連で小遣いを稼いでも、買いたいものはあまりなかったと思う。
「持ってない」と私が答えると、彼はさして残念そうな顔もせず、去って行った。たったそれだけの話なのだが、そんなことを久しぶりに思い出したのだった。
さて、次の新旧比較写真はクレムリンの南側の門を出たあたり。モスクワ川に架かる橋の北側である。


そして、橋を渡って南側でも撮影したのが次の写真。もっとも、この写真は1981年に撮ったものである。どうやら、前2回のモスクワ散歩では似たようなコースを歩いていたようだ。


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