なぜ糖尿病になるとアルツハイマー病のリスクが増すのか? 森下教授によると、その原因は「インスリン分解酵素」にある。
食事をすると、血糖値が高くなる(血液中のブドウ糖が増える)。すると、すい臓からインスリンが分泌され、血液中の糖を筋肉などに運び込む。その結果、血液中の血糖値は下がる。このインスリンが効きにくくなった状態を「インスリン抵抗性が高まる」といい、これが糖尿病への第一ステージとなる。インスリンが効きにくくなると、血液中の糖を消すため、より多くのインスリンを分泌するようになっていく。
余ったインスリンはインスリン分解酵素によって分解されるが、このインスリン分解酵素は脳にたまるアミロイドβも一緒に分解するという重要な役割も持っている。ところが「血中のインスリンが多いと、そっちの分解に専念しなければならず、アミロイドβまで手が回らない。その結果、脳内にアミロイドβが増えていく」と森下教授は説明する。
「夜だけ糖質制限」と運動と睡眠を
糖尿病からアルツハイマー病が起こる――。逆に言えば、糖尿病にならないようにすればアルツハイマー病の予防にもつながる可能性があるかもしれない。
血糖値が気になる人の糖尿病予防対策として、森下教授は「糖質制限食」を勧める。ご飯やパン、スイーツといった糖質をなるべくとらない食事法で、ダイエット効果が高いことでも有名だ。3食すべてで行うのはつらいが、「夜だけ糖質制限」ならハードルは低い。基本は、夕食にご飯やパンなど炭水化物の主食を食べないことだという。どうしても食べたいときも白米は避け、玄米、パスタ、全粒粉のパンなど、食物繊維が多く血糖値を上げにくいものを選ぶといいだろう。
運動や睡眠も大切だ。毎日の睡眠時間が5時間を切ると、7~8時間の人に比べて糖尿病の発症リスクが2.5倍に上がるという(Arch Intern Med.2005 Apr 25;165(8):863-7)。
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