認知症には、いくつか種類がある。脳梗塞や脳出血など脳の血管の病気で脳に酸素が届けられなくなった結果、脳神経細胞が死滅して起こる「脳血管性認知症」や、神経細胞にできるレビー小体という特殊なたんぱく質が大脳皮質や脳幹に蓄積して脳神経細胞が死滅する「レビー小体型認知症」、そして、認知症の中で最も多く、50%以上を占めるのは「アルツハイマー病」だ。これは脳にアミロイドβ(ベータ)などの異常たんぱくが増えた結果、脳の神経細胞が急速に壊れていくことによって引き起こされる。
アルツハイマー病は加齢と深い関係がある。
「60歳以上では1~2%の人が発症するが、80歳以上では20%が発症。85歳以上になると30%を超える」と三村教授は指摘する。
アルツハイマー病はある日突然、発症するわけではない。アミロイドβなどの異常たんぱく質は、10年以上かけて脳に少しずつがたまっていく。やがて、脳神経細胞が死滅し、日常生活に支障を来たすようになる。この前段階、つまりアミロイドβはたまっていて、もの忘れはあっても日常生活は送れる状態をMCI(軽度認知障害)と呼ぶ。三村教授によると、ここから「1年間で12人に1人くらいが認知症に移行する」という。
糖尿病&予備軍はアルツハイマー発症リスクが4.6倍
なぜアミロイドβがたまるのか、はっきりとはわかっていない。そのためアルツハイマー病の予防も難しかったわけだが、大阪大学大学院医学系研究科・臨床遺伝子治療学寄附講座の森下竜一教授らの研究グループは、アルツハイマー病と糖尿病に強い相関関係があることを明らかにした(Proc Natl Acad Sci USA.2010 Apr 13;107(15):7036-41)。
「糖尿病のマウスとアルツハイマー病のマウスをかけ合わせたら、生まれたマウスは生後わずか2カ月でアルツハイマー病になってしまった。アルツハイマー病の人が全員糖尿病というわけではないが、糖尿病を患っていてその後にアルツハイマー病を合併する人は確実に増えている」と森下教授は指摘する。
実際、糖尿病とその予備軍の人たちがアルツハイマー病を発症するリスクは、血糖値が正常な人に比べて実に4.6倍も高い(老年期認知症研究会誌2011;18:20-4)。
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