アンチエイジングといえば、女性の関心事と思いがちだが、そうではない。WHO(世界保健機関)の「世界保健統計2015」によると、平均寿命84歳の日本は世界一の長寿国だ。しかし男女別に見ると、女性は第1位なのに、男性は第6位にすぎない。日本では、女性は健康に気を遣っているが、男はそうでもないという現実がそこから見て取れる。本当にアンチエイジングが必要なのは、実は男性のほうだった!

 今回のテーマは「精子のアンチエイジング」。

 女性はやがて子どもを産めなくなる。しかし精子は毎日作られるため、男性は何歳になっても子どもを作れる。そう長いこと思われてきた。ところが最近の研究から、男性も歳を取ると妊娠させるのが難しくなることが判明。"精子力"は若さのバロメーターにもなっているという。

男は何歳になっても子どもを作れるのか?

 今年、タレントの石田純一さんは62歳にしてまもなく娘を授かる。チャールズ・チャップリンは73歳で父親になっている。性行為さえできれば、男は何歳になっても子どもを作れるもの――と信じている人も多いだろう。

 ところが、実はそんなことはないらしい。「高齢になっても子どもを作れる男性もいる一方、35歳を過ぎると"精子力"、すなわち妊娠させる力が落ちる男性も多い」と、獨協医科大学越谷病院(埼玉県越谷市)泌尿器科の岡田弘主任教授は指摘する。

 782組の夫婦を対象に、「夫婦の年齢と妊娠する確率」を調べた研究がある。妻の年齢が27~34歳の場合、「夫が同い年」でも「夫が5歳上」でも妊娠率はほとんど変わらない。ところが妻が35~39歳になると、「夫が5歳上」は明らかに妊娠率が落ちる(下グラフ)。つまり、40歳を過ぎた男性は妊娠させにくくなるわけだ。

 別の調査では、5081人の精液を調べた結果、精子の数は35歳から毎年1.71%ずつ減り、精子の奇形率は41歳から毎年0.84%ずつ増えることが分かった。さらに44歳から精子の運動率が落ちていく(Fertil Steril. 2013 Oct;100(4):952-8)。

静脈瘤で男性不妊症になることも

 要するに、男性にも子作りのタイムリミットはあるということ――。晩婚化が進んでいるが、子どもが欲しかったら40歳までに結婚したほうがいいだろう。帝京大学医学部泌尿器科の木村将貴講師によれば、「一般に子どもを作ろうと思ってから1年間できなければ不妊症。そのうち、40~50%は男性にも原因がある」という。

 1年以上経っても子どもができない場合、特に40歳を過ぎていたら早めに医療機関に行って検査を受けてほしい。精索静脈瘤や停留精巣が原因になっていれば、手術による治療が可能だ。

 精索静脈瘤とは、精巣(睾丸)の上にできる静脈瘤。精巣の温度が上がり、活性酸素も多くなるため、精巣の機能が落ちてしまうのだ。15%以上の男性に精索静脈瘤が見られるが、特に不妊症の人では35~40%にあるという(Urologia. 2014 Jul-Sep;81(3):165-8)。手術は難しいものではなく、受けた当日に家に帰れる。