1月5日、『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス刊)が発売から4カ月あまりで100万部に達した。「不作の年」と言われた2017年の出版業界で、数少ない大ヒットの1つである。
1937年の出版以来、多くの人に読み継がれてきた吉野源三郎氏の小説『君たちはどう生きるか』。いじめや貧困、格差、教養…。昔も今も変わらないテーマに、主人公のコペル君と叔父さんは真摯に向き合い続ける。
時代を超えた名著だが、今、ミリオンセラーとなった1つの理由は、原作を忠実に漫画化するのではなく、意訳しながら現代向けに「翻訳」したことだろう。冒頭の印象的なシーンを含め、原作と漫画には場面設定や章構成に違いが見られる。
企画の仕掛け人はマガジンハウス執行役員の鉄尾周一氏、担当編集者は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」「嫌われる勇気」の編集者として知られる柿内芳文氏と、「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」を大ヒットさせたコルク代表の佐渡島庸平氏。いずれも名物編集者だ。
構想5年、企画から発売まで約2年。個性的な編集者に囲まれて、漫画家・羽賀翔一氏はこの物語をどう自分の作品として描いていったのか。その試行錯誤を聞いた。
(聞き手は日野 なおみ、島津 翔)
企画から発売まで2年。漫画としては異例の長期戦になりました。
そうですね…。版元であるマガジンハウスの鉄尾周一さんからは「どうなってる?」と定期的に声を掛けていただいたのですが、なかなか自分の中で消化できず…。ご迷惑をお掛けしました。
それは、原作があったからこそ時間が掛かった?
担当編集者である柿内芳文さんと常に確認していたのは、「原作を越えよう」「原作より面白いものを作ろう」ということでした。単なる名作のコミカライズではなく、僕にしか描けないものを描こうと。
原作があってストーリーが決まっているのだから、漫画にするのなんて簡単だろう、と思われる方もいるかもしれません。でも、漫画を描くってことは、自分の中にある記憶や経験、感情の引き出しを開けなければなりません。その過程を経ないと、キャラクターが動き出さない。

原作を読んだ感想は?
それこそ、キャラクターが動いていたんです。
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