経済が好調に推移すると見込まれる2018年。この好調期こそ、日本に蔓延している通念(常識・観念・俗論)を打破して、新しい挑戦に取り組まなければならない──経済同友会の小林喜光代表幹事とアジア成長研究所の八田達夫所長(大阪大学名誉教授)は、共通した問題意識を持つ。

 対談の前編では、人口減少が進んだとしても、考え方を変えれば日本はまだまだ成長できるという点で意見が一致した。後編では、定期採用の見直しや移民の受け入れなど、痛みの伴う労働市場の改革についても議論が及んだ(司会は日本経済研究センターの斎藤史郎参与が務めた)。

経済同友会の小林喜光代表幹事(左)とアジア成長研究所の八田達夫所長(右)。写真は的野 弘路(以下同)

カギ握る労働市場改革

斎藤史郎氏(=司会、 以下斎藤):世界経済の拡大にも恵まれ、景気には明るさが広がっています。日本経済がダイナミズムのある経済成長を続けるには労働市場改革が必要との指摘が少なくありません。

小林喜光氏(以下、小林):そう、そこがカギですね。

八田達夫氏(以下、八田):私も、そこがカギだと思います。

小林:世界は一流の選手をそろえてプロフェッショナルの戦いを挑んでくるのに、日本だけが、プロも、一般人も、その分野の適性がない人も、みんな均一の条件で戦うというのは、いわば社会主義国のようなものです。

小林喜光(こばやし・よしみつ)氏
三菱ケミカルホールディングス会長。1946年生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了後、イスラエルのヘブライ大学、イタリアのピサ大学に留学。74年三菱化成工業(現:三菱ケミカル)に入社。2007年三菱ケミカルホールディングス社長に就任、15年4月より同会長に就任(現職)。このほか、経済同友会代表幹事や未来投資会議構造改革徹底推進会合会長、東芝の社外取締役なども兼ねる

 会社は新陳代謝をしており、しなければ生きていけません。ところが、新陳代謝をした暁に、社内失業者のような人がたくさん出てしまう。これはその人にとっても、会社にとっても不幸です。そういう人にも自分に合った仕事が見つかるミスマッチのないような労働市場をつくる。そんな仕掛けが必要です。多様な人たちが、それぞれ多様な方向で生きていく。

 やたら働く人もいるし、ほとんど働かずに暢気にやっている人もいる。それぞれ受容しながら、最終的なところでみんなある程度、エンジョイできる社会にすることが大切だと思います。

八田:労働市場の流動性を高めることができれば、どんどん新しい体制に移っていけると思います。ところが、今は、例えば仮に本当に優秀な人材がいて、中途採用したくても、年功序列でポジションが空いていないからできない。これでは何もできません。

 もちろん、解雇されないという条件で雇われた人を解雇してはまずいですが、高い給料を得る代わりに解雇されてもいいんだ、というような条件で人を雇うこともなかなかできないというのは問題だと思います。日本では法律上、解雇が非常に制約されています。