司会は日本経済研究センターの斎藤史郎参与が務めた

斎藤:「平成の鬼平」と言われた時代ですね(注:当時の日銀総裁の三重野康氏は矢継ぎ早に金融引き締め政策を実施し「平成の鬼平」と呼ばれた)。

八田:その結果、みんな「2度と経済は回復しない」という予想を持つに至ったわけです。実際は、始末の付け方がものすごく下手なだけだったのです。「適当な」バブルなら、恐れちゃいけないと私は思いますね。

IT企業の時価膨張はバブルではない

斎藤:株価上昇に伴い企業の時価総額も膨らんでいますが…。

小林:ここ4,5年の日本の企業を見て思うのは、時価総額と8%以上のROE(自己資本利益率)とはかなりリニア(比例的)ではないかということです。一方、米国ではIT企業が勢いを増し、マイクロソフトの先を行くアップルやアルファベットあたりは時価総額が100兆円を超えています。アマゾンなんかも4番手か5番手にいる。しかし、実際の儲けはそれほど多くはない。リニアではないんです。全然儲けていないのに何十兆円もの価値が付く。「0から1をつくるプラットフォーマー」のような企業に対する株式市場の評価は高い。最近では中国勢もアリババ(阿里巴巴)やテンセント(騰訊)に50兆円規模という驚くほどの価値が付いている。

 他方、トヨタ自動車は時価総額ランキングで40位まで落ちてしまっている。ユニコーン(評価額が10億ドルを超えているベンチャー企業)だって日本には1~2社ありますが、米国の109社、中国の59社に比べると、圧倒的に少ない(米投資調査機関のCBインサイト調べ)。

 ただし、プラットフォーマー的企業にとんでもない価値が付いても、バブルではないと見るべきではないでしょうか。そういう企業の時価総額が大きく膨らんでいるのはインターネットやAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボティックスなどを駆使して、世界経済あるいは人類の中で新しいコンセプトをクリエイトしているからじゃないでしょうか。リアル空間からバーチャル空間にシフトし、まだまだ経済に伸びしろがある。人類がもっとエンジョイできる世界に入りつつあるのではないかと思ったりします。

 その点で、日本はかなり出遅れてしまった。リアルエコノミーばかりに固執している部分があるのではないかという気がします。

斎藤:八田さんは、米国のIT企業の時価総額と足元の利益が乖離していることをどうご覧になりますか。バブルなのか、将来の成長への期待なのか。

八田:それは、将来の利益の伸びが現在価値に引き直されて反映されているわけですから、バブルではないですよね。実体を反映しているわけです。実体以上に余計に膨らんでしまうというのがバブルですから。もちろんバブルのエレメントがひょっとしたらあるかもしれないが、そうではないと思います。

小林:金や土地と違うところは、そこだと思うんですよね。

八田:全くその通りです。

小林:まさに人間のクリエイティビティーということでしょう。

社会保障制度の持続性に不安

斎藤:2019年(平成31年)には元号が変わり、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。経済への影響はどのようにご覧になりますか。

小林:我々が若かった時代は、車や高級品などを買いたいという欲求があり、モノに対してかなりアクティブでした。しかし、最近の若者は、欲望に対してだいぶ鈍感になっていると感じています。彼らの消費のメインはソフトウエアやサービスですよね。

 まあ、そうは言っても2020年に控える東京五輪は、経済活性化の1つの材料となり得るでしょう。北朝鮮や中国、ロシアの情勢が悪化したり、イスラエル、中東問題が緊迫したりするようなことがない限り、2020年までは景気は順当に拡大すると思います。

 問題は2020年以降です。少子高齢化が急速に進む中、社会保障費は年々増加しています。借金(政府債務残高)がGDP比で2倍以上に膨らんでおり、社会保障制度は持続可能なのか。この最も大きな問題について政府はきちんと準備しているのか、という懸念がありますね。