東京電力エナジーパートナーは12月26日、ガス小売り事業に参入すると発表した。日本瓦斯と組み、異業種が参入しやすい仕組みを作る考えだ。参入障壁の高さから躊躇していた異業種が参戦すれば、競争が活発化するかもしれない。  

 2017年4月に控えるガス小売りの自由化を前に、12月26日午後、東京電力グループで電力小売りを手がける東京電力エナジーパートナー(EP)と東京ガスがそれぞれ相次ぎ会見を開いた。

 東電EPは2017年7月にも家庭向けガス小売り事業に参入すると発表。自社で初年度に4万軒の顧客獲得を目指すと同時に、業務提携している日本瓦斯(ニチガス)とともに、ガス小売り事業のノウハウや設備を持たない異業種が小売りに参入しやすくなる仕組み(プラットフォーム)を提供する考えも明らかにした。これにより、ガス小売り市場の競争が活発になる可能性がある。

ガス小売り事業参入を発表する東京電力エナジーパートナーの小早川智明社長(右)と業務提携している日本瓦斯の和田眞治社長
ガス小売り事業参入を発表する東京電力エナジーパートナーの小早川智明社長(右)と業務提携している日本瓦斯の和田眞治社長

 迎え撃つ東ガスの広瀬道明社長は同日、「東電、ニチガス連合は最大、最強の敵。だが、ガスは電気と異なり、料金だけでなく設備やサービス面の質も問われる。長年の蓄積のある我々を選んでくれるはず」と見せた。

東電・ニチガス連合を迎え撃つ東京ガスの広瀬道明社長
東電・ニチガス連合を迎え撃つ東京ガスの広瀬道明社長

 設備やサービスが重要だと広瀬社長が指摘したように、ガス小売りへの参入障壁は電力以上に高い。そのため、このままでは電力、ガス会社以外のプレーヤーが市場に参入するのは難しいとされていた。実際、新電力をはじめとしてガス小売り事業への参入を検討する企業は少なくないが、その多くが障壁の高さに躊躇している。

 東電とニチガスがプラットフォーム運営に乗り出す理由がここにある。自社の設備や原料、事業運営ノウハウを公開して広く使えるようにすれにすれば、異業種から多くの企業を集められると見込む。これが実現すれば、両社はプラットフォーム利用料という安定的な収益基盤を確保できるわけだ。

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