JDIに接近する中国メーカー

 「ディスプレー産業は未曾有の大転換期に差し掛かっている。JDIは高精細化などの世界最先端の技術で業界をリードしてきた。このポジションを維持するためにも、ここは思い切って開発資金を入れ、“勝てる戦”をしていく」。革新機構の谷山浩一郎常務執行役員は今回の追加投資の狙いをこう話す。しかし、「今回の追加投資をもってJDIやディスプレー産業の発展を仕上げたい」としており、これがJDIへの最後の追加投資になることも示唆した。

 今回の追加投資にいたるには、革新機構側にも焦りがあった。ある幹部によると、「今年の9月頃、資金繰りにあえぐJDIに中国スマホメーカーから出資の打診があった」と明かす。詳細をつめるまでの協議には至っていないが、提示された金額は数千億円。中国メーカー側としては、高精細パネルの調達を確実にするためにJDIを囲い込みたいとの思いがあったようだ。

 しかし、革新機構を筆頭株主とするだけに中国メーカーの出資をそのまま受け入れることはできない。また、最大顧客であるアップルから睨まれることも必至だ。打診はすぐに断ったというが、資本注入がなければ液晶も有機ELの事業も立ち行かなくなってしまう状態に追い込まれていた。とはいえ、公的資金を使うだけに革新機構による資金支援は「成長分野」に限定されている。救済ではなく、「成長投資」と言える要素を作る必要があり、その一つとしてJOLED子会社化に踏み切った。

ようやく実現した日の丸ディスプレー構想

 JOLEDの子会社化は、1年以上前から革新機構が描いていた構図だ。正確に言えば、シャープの液晶部門、JDI、JOLEDの3社を統合し、「日の丸ディスプレー連合」にする構想を立てていた。“爆投資”による量で勝負する中韓勢とは一線を画し、「技術でリードできるディスプレー会社にし、国が成長資金を支援する」(革新機構幹部)形を目指していたのだ。

 しかし、3月末にシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りを決定。シャープ抜きのJDIの成長戦略の中で、いつどのタイミングでJOLEDを合流させるか、革新機構側としても時期を見定めていた。今回の資本投入で、JDIは液晶に加えて、印刷方式と蒸着方式の両方の有機ELパネル技術で勝負していくという「成長戦略」をなんとか打ち出した格好だ。

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