追い詰められていた共和党

 トランプ氏は大統領就任以来、オバマ政権時代に導入された規制の撤廃や緩和を進めている。だが、本人の発言とは裏腹に、立法面における成果はないに等しい状況だった。このまま税制改革まで失敗すれば、トランプ政権の実行力を疑問視する声が相次いだだろう。

 尻に火がついていたのは共和党も同様だ。

 共和党は上下両院で過半数を維持しており、議会をコントロールできる立場にある。大統領も生粋の保守政治家ではないが、共和党の候補として大統領選を勝利したトランプ氏だ。しかも、税制改革は共和党を支える大口献金家や企業が強く求める看板政策。その中で税制改正まで頓挫すれば共和党指導部のメンツは丸つぶれである。

 もっとも、「税」は利害関係が幅広く、同じ政党の中でも各論では賛否が入り交じる。共和党はフリーダム議連のような財政タカ派から中道右派の穏健派までウイングが広く、2018年11月に中間選挙を控えているため時間的な余裕はほとんどない。10月末のハロウィンの頃は年内の税制改革は無理筋という見方が主流だった。

最大の難関、上院で起こった様々なドラマ

 その状況下、共和党指導部は猛スピードで立法プロセスを進めた。上院と下院の意見をまとめる時間がないため、それぞれが別の法案を可決、あとで一本化するというプロセスを取った。税率も下院案では20%だったが、財政規律を重視する上院に配慮して一本化の過程で21%に引き上げている。法案の詳細をぎりぎりまで明らかにしなかったのも中身への批判を封じ込めるためだ。

 それでも、共和党の議席が52(定数:100)しかない上院では様々なドラマが起きた。

 上院版の税制改革法案を採決する際には財政赤字の懸念から共和党の重鎮、ボブ・コーカー上院議員が反対票を投じた。同じ共和党のスーザン・コリンズ上院議員は不動産税の控除、ロン・ジョンソン上院議員も個人事業主やパートナーシップなどのパススルー企業への控除が少ないと批判している。

 法案一本化の過程でも、土壇場でマルコ・ルビオ上院議員が子女控除の還付を巡り不満を表明、共和党に緊張が走った。12月19日に中東訪問を予定していたマイク・ペンス副大統領が予定を延期したのは上院の採決で賛否同数だった場合に最後の1票を投じるため。最終的に控除額の引き上げなどで反対議員を懐柔したが、かなりきわどい情勢だったのは間違いない。

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