井阪社長は10月、オムニセブンについて記者会見で「失敗」と表現。全面的な見直し方針を表明した。これについて、今年の春までオムニの責任者だった康弘氏はこう話す。

「私は部下に対して、オムニセブンはiPhoneとiPadとMacBookをたとえにして、説明してきました。iPhoneがコンビニ、iPadはスーパー、MacBookが百貨店です。たとえば音楽を聞きたいとする。端末によって、楽曲をクラウド上から毎回ダウンロードするのか、ストレージに常時データを残しておくのかは異なります」

「iPhoneの場合は、容量は小さいけれどいつも持ち歩く。だから聞きたいときに、聞きたい音楽をダウンロードするストリーミング再生が主流になっていますよね。これってオムニセブンにおけるセブンイレブンの位置づけと同じなんです。コンビニは店舗の面積こそ小さいけれど、近くて、便利。オムニセブンという『クラウド』から、お客さんが自分の好みに応じて商品を取り寄せできて、お客さんが好きなようなお店に変われるのです」

 セブン&アイは、多様な小売業の業態を持ち、それぞれが商品の受け取り拠点などの役割を担う「端末」として機能する。だが、もちろん、魅力的なコンテンツ(オムニセブンの場合は商品)がなければ、iPhoneもiPadもMacBookも誰も利用してくれない。だからこそ、父の敏文氏は「オムニ(の核心)は商品だ」と言い続けてきたのだろう。

 井阪氏が描くのは「アカチャンホンポを利用したお客さんが、数年後にイトーヨーカ堂で子供服を買うようになり、じきにそごう・西武でスーツを買ってもらうことがグループのシナジーになる」という経営戦略だ。ただ、消費者にとってはセブン&アイグループの商品を買い続ける義理はない。今後は、魅力ある商品を取り揃えるための開発体制や、グループ外部の企業との柔軟な提携戦略も求められることになるだろう。

51歳のうちに次のステージへ

「来年2月に52歳になります。僕は20歳代の初めに富士通に入社し、10年後にソフトバンクに転じました。セブン&アイに参加したのも、それから10年後です。これまで僕の人生は10年刻みだったので、51歳のうちに前に進みたかった」

 康弘氏は今後、システムエンジニアとしても、事業会社の一員としても働いた経験を生かし、ITシステムと経営をつなぐような事業を手がけたいと話す。自分で会社を立ち上げるのか、どこか既存企業に所属するのは未定だという。

 コンビニという業態を一から日本に築き上げた敏文氏と、その進化系である「オムニセブン」を実現するための基礎となるシステムの整備を主導した康弘氏。2人が去ったいま、セブン&アイはどこへ向かうのか。社内外から「コンサル会社に頼りすぎている」という批判も上がる中、新しい経営陣は、自ら戦略を描く構想力が問われている。