
12月初旬、「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」が北京で開催された。各国政府のど真ん中の人物に焦点を当てて、中国への理解を深めさせ、そして「中国礼賛」へと洗脳していく――。「世界の工場」「巨大市場」として、経済に大きな存在感を占めるに至ったこの国が、次に狙うのは精神だ。対話会では「中国イニシアチブ」が採択された。紅い中国が世界を染める狙いを覗かせる日がやってきたのだ。
本稿では、第19回党大会で決議された「習近平(シージンピン)新時代、中国の特色ある社会主義思想」とは何かを紐解き、その一連の流れの中で遂に現し始めた習近平の正体を考察する。
「習近平思想」とは何か
遠藤 誉(えんどう・ほまれ)
1941年、中国吉林省長春市生まれ、1953年帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。最新の著作は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』。主な著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)『チャーズ 中国建国の残火』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』(朝日新聞出版)など多数。
10月24日に閉幕した第19回党大会(中国共産党第19回全国代表大会)では、党規約の改正が行われ、党の綱領として「習近平思想」が盛り込まれることが決議された。正式名は「習近平新時代中国特色社会主義思想(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)」という非常に長い文言で表現されている。
これまで党規約には、その政権が終わった段階で、新たに当該政権スローガンを明記する、という習慣があった。毛沢東思想は建国前から入っていたが、それ以外は政権一期目に書き入れることはない。党規約の冒頭には「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表重要思想、科学的発展観」が書かれていたのだが、ここに「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という言葉を、まだ政権一期目の終わりにも拘わらず、明記することが決議されたわけだ。
マルクス・レーニン主義という共産主義国家におけるくくり以外では、個人名があるのは毛沢東と鄧小平のみ。おまけに「個人名+思想」という形は、建国の父である毛沢東以来、初めてのことだ。習近平は、少なくとも党規約の中では、毛沢東と並んだことになる。
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