80年代は一方的制裁を振りかざすのが米国だけだからよかったが、今やそうでない。80年代の成功体験をもって行動するライトハイザー代表は、その危うさに気づくべきだろう。

 なお中国による韓国に対する経済報復に対しても、本来、毅然とした態度で一方的制裁に反対しなければ、このような中国の報復が常態化しかねない。しかし肝心の韓国が先般の中韓首脳会談で中国に屈服するばかりか、対日歴史問題で共闘する姿勢で中国に擦り寄っている。文政権がしっかりさえしていれば、来年予定されている日中韓サミットで日韓が対中共闘すべきところを、逆に日韓が分断されているという致命的な状況なのだ。

日本は「対中有志連合」で米国繋ぎ止めに奔走

 日本にとって今回のWTO閣僚会合の最大のテーマは、米国をWTOに繋ぎ止めることだった。そのためには最大の懸念である中国問題について、WTOの場で米国も巻き込んで共同対処する道筋を作ることが不可欠だ。そうでなければWTOの崩壊にも繋がりかねない。そういう危機感を欧州、豪州とも共有し、過剰生産や国有企業への優遇、不透明な補助金などを是正させる仕組みや、電子商取引分野のルール作りなどに日本は奔走した。ルール不在のパワーゲームになれば、大市場を持った中国が喜ぶだけだ。

 残念ながら国内政治にばかり目が行く米国には、未だその思いが届いていないようだ。しかし日本が努力した方向は間違っていない。実利優先の米国を世界秩序に繋ぎ止めるためには実利を感じさせなければならない。今後も日本はそのための仕組みづくりを欧州、豪州などを巻き込んで主導すべきだろう。

 幸い、先般の米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)の大筋合意に至る参加各国間の調整においても、日本が誠実に調整役を果たしたことは各国からも高く賞賛されている。明らかに「善意の仲介役」としての役割を期待されているのだ。

 来年、トランプ政権はますます内向き志向になって、米中貿易衝突も予想されるだけに、日本の出番は増えるだろう。

この記事はシリーズ「細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。