2017年度の与党税制改正大綱がまとまった。「大玉」と目された所得税改革は踏み込み不足が否めないが、ビール系飲料の税額統一など「脇役」メニューは体裁を整えた格好だ。「政治の論理」が壁となる中、実務を担った財務省内には一定の満足感も漂っている。

 自民、公明両党が2017年度税制改正大綱を決めた。政府が掲げる「働き方改革」の一環として焦点となっていた所得税の配偶者控除の見直しについては、配偶者(妻)の年収上限を103万円から150万円に事実上引き上げることで決着した。

配偶者控除については、2018年1月から妻の年収要件を103万円から150万円に事実上、引き上げる。パート主婦が働きに出やすい環境を整える。(写真:Haruyoshi Yamaguchi/アフロ)

実態は「パート主婦減税の拡大」

 103万円は企業の配偶者手当の基準になっている場合も多い。パート主婦が就業調整して働く時間を抑える傾向がかねてより問題視されていた。対象を拡大することで新たに約300万世帯が減税になるとみられ、自民、公明の税制調査会幹部や財務省はパート主婦がより長く働きやすくなる効果が期待できるとしている。

 一方で、財源を確保するため世帯主(夫)の年収が1120万円を超える世帯への適用は制限する。その結果、これまで減税を受けてきた100万世帯は増税となる。

 要は、主に専業主婦世帯を優遇する配偶者控除を事実上維持し、パート主婦への減税を拡大する。それに伴う減収分を高所得の専業主婦世帯への増税で穴埋めするというのが今回の改正の姿だ。

 財務省や自民税調幹部が当初思い描いていたのは、配偶者控除を廃止し、一定の年収以下であれば専業主婦だけでなく共働きの世帯も優遇する「夫婦控除」を創設する構想だった。

 安倍晋三首相も9月上旬の政府税制調査会で「女性が就業調整をすることを意識せずに働くことができるように多様な働き方に中立的な仕組みを作っていく必要がある」と発言。見直し論議に意欲的な姿勢だった。

 そこへ立ちふさがったのが「選挙の壁」だ。来年夏には公明が重視する東京都議選が控える。さらに、永田町では早期の衆院解散・総選挙の観測がにわかに広がり、支持層に専業主婦世帯などが多い公明内では「増税世帯からの反発が大きくなると選挙に響く」との懸念が一気に拡大した。

 公明とのパイプが太い菅義偉官房長官もこうした空気を踏まえ、財務省幹部に「違和感がある」と表明。慎重姿勢を鮮明にしたことで、10月上旬には早々と先送りの流れが固まった。

 昨年の税制改正論議では、軽減税率の対象品目を巡り自民、公明の対立が先鋭化。首相官邸が公明に配慮し、自民・財務省の主張を退けた経緯がある。