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世界の温暖化対策を牽引してきたフランス

 そもそもなぜ、マクロン大統領は燃料税の引き上げにこだわったのか。背景には、フランスが国際社会を牽引する地球温暖化対策がある。

 様々なニュースの間ですっかりかすんでいる感があるが、12月2日から14日まで国連の気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)がポーランドで開催されている。このCOPの動向を、欧州メディアは積極的に取り上げている。欧州各地で温暖化の影響が出ているからだ。今年夏は欧州各地が記録的な暑さとなり、北欧やギリシャで森林火災が発生。多くの死者が出た。

 様々なデータや警告がある。国連の気候変動に関する政府間パネルは10月に特別報告書を公表。産業革命前と比べ、世界の平均気温の上昇を1.5度以下に抑えるためには、50年までに二酸化炭素排出量を実質的にゼロにしなければならないと明言した。

 世界気象機関は11月、大気中の二酸化炭素の世界平均濃度が17年に過去最高を更新したと発表。濃度の上昇にブレーキが効かず、温暖化がさらに進む可能性があると警鐘を鳴らした。

 20年以降の温暖化対策の国際枠組みは、15年にパリで採択されたため、パリ協定と呼ばれる。COP24ではその細則を詰める予定である。

 だが、米国のトランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明し、その実効性が疑問視されている。マクロン大統領はそのトランプ大統領の説得役を買って出ているのだ。「私は絶対に諦めない。それが自分の使命だと思う」とまで話している。

 皮肉なことにそのマクロン大統領のお膝元であるパリで、温暖化対策のための燃料税に反対するデモが広がり、パリ協定の存在が揺らいでしまっている。

デモ隊から「マクロン辞めろ」の合唱が起きていた

 マクロン大統領は温暖化対策だけでなく、様々な改革を進めてきた。特に力を入れてきたのが、フランスの構造改革だ。フランスは他の先進諸国に比べて公務員の比率が高く労働組合が強い。そのため雇用の流動性に乏しく、低成長の状況が続いている。

 こうしたフランスの積年の課題にメスを入れたのがマクロン大統領だった。公務員を削減し、労働者を解雇しやすくする法改正を実施する一方、法人税を減税し、社会保障費の負担を高めた。

 経済成長などの成果が出ていたら、改革に対する不満はさほど顕在化しなかったかもしれない。しかし、成果が出るまでの時間がかかっている間に、低所得者などの不満のマグマがたまり、これが今回の燃料税の引き上げで、爆発した。

 支持率は低迷するものの、フランスの構造問題への課題認識を共有するフランス人は多い。だからこそ、改革を標榜するマクロン大統領を選んだ。

 構造改革を断行して経済を活性化すると同時に、国民の不満を和らげる――。こうした難題を解決できる指導者や政策は見当たらない。デモが勢いづき、マクロン大統領が窮地に追い込まれるほど、フランスが抱える構造問題の根深さが浮き彫りになっている。