全4293文字

パリでは局地的に破壊や略奪があった

 8日夜。パリの所々で店舗の襲撃があったとの情報が入る。一報があったレピュブリック広場に行くと若者たちが集結していた。そこにはもう黄色いベストを着た人は確認できない。

 9時半過ぎ、治安部隊の車両が広場を囲んで動き出す。広場の中央に催涙弾を大量に打ち込むと治安部隊の突入が始まった。数人を押さえつけたものの、それ以外の若者たちが四方八方に散り散りになる。

 そこから、記者がいる小高い階段に、細身の1人の男が治安部隊から逃走するために登ってくる。その後ろには、銃器を持った二人の治安部隊の姿が。

 男は階段を登りきったところで、治安部隊の1人に追いつかれた。揉みあいながら倒れると、屈強な隊員に押さえ込まれ、男はうめき声を数回あげた。数人の隊員に取り囲まれると、ようやく抵抗を諦めた。落ち着き始めたところで、治安部隊の車両に連行された。

12月8日夜、パリのレピュブリック広場で男が治安部隊の隊員に拘束される瞬間

 夜が明けた9日、暴徒に襲撃を受けた店舗などの様子が明らかになる。中心部にあるスターバックスは、店のガラスがほぼすべて割られ、店内も破壊され尽くしていた。近所の住民なのか、店をのぞきながら肩を抱き合う老夫婦もいた。

 パリ市内のいくつかの店でこうした破壊行為や収奪があったもようだ。もはやこれはデモでもなんでもなく、暴力による犯罪行為だ。店は保険に入っているのかもしれないが、デモのたびにこうした破壊行為を警戒するとなれば、通常の営業ができなくなる。

パリ中心地にあるスターバックスはほぼすべてのガラスが割られ、店内の設備も壊されていた。隣のカフェがほとんど破壊されていないのと対照的だった

 ただ、街を歩いていて特徴的なのは、激しい衝突がある通りから少し離れた場所は平穏なこと。レストランなどが通常営業しており、食事や買い物などの市民生活が営まれていたことだ。

 8日夜にパリ市内を歩くと、飲食店は多くの人でにぎわっていた。パリ市内でお好み焼き店を経営する田淵寛子さんは、「デモが始まってから、土曜日は少しお客さんが少なかった。今日のランチはいつもの3分の1程度しかお客さんが入らなかったけど、夜はいつも通り満席になり安心した」と語る。

 デモから一夜明けた9日は、どの店も客足を取り戻していた。特に中心地にある店舗は、前日の休業を取り戻すかのように多くの客が集まっているようだった。