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「生活が苦しい」と訴えるフランス国民

 フランスで11月17日から始まったデモは毎週土曜日に開催され、今回で4週連続となった。きっかけはマクロン大統領による燃料税の引き上げである。

 マクロン氏が大統領に就任した16年以降、原油価格の上昇でガソリンや軽油の価格も上昇しており、地方の住民など日常的にクルマで移動する人々の生活を圧迫した。それに温暖化対策のための燃料税の引き上げが追い打ちをかけ、人々の怒りに火をつけた格好だ。

 19年1月に予定していた増税に反対するフランス国民が、全国各地でデモを始めた。多くの参加者はシンボルとして蛍光の黄色いベストを着用している。12月1日の仏各地のデモでは1人が死亡し、パリでは130人以上が重軽傷を負った。

 回を重ねるにつれて、治安部隊の動員数を増やしているが、デモの勢いは衰えず、過激化している。そのためマクロン政権は5日、19年中の燃料税の引き上げ凍結を発表し、デモの収束を図った。

治安部隊の車両とエッフェル塔を背景に、フランス国旗を手に持つデモ参加者。報道陣のカメラを意識しているようだ

 それでもフランス国民の反対の声は収まらなかった。当初は燃料税の引き上げへの反対だったが、マクロン氏の政策全体に対する抗議活動の意味合いが強くなった。マクロン大統領が実施してきた、公務員削減や労働法の改正、社会保障費用の負担増などの政策に反対し、国民の不満が一気に吹き出した形だ。

 パリの郊外からデモに参加したというヴァージルさん(25歳)は、「仕事がない。燃料税だけじゃなくて、生活に必要な費用が高騰している。生活が苦しい」と訴えた。

マクロンの政策すべてに反対するヴァージルさん

 個人ごとの事情はあるだろうが、全体として見れば、確かにフランスの失業率は9%台と日米だけでなく、EUの平均値より高い。

 支持率も低下する一方だ。16年の大統領に就任時には60%以上あったマクロン氏の支持率は下がり続け、足元では20%台で低迷している。

 デモ参加者は老若男女がいるが、特に若者が多い。回を重ねるごとに過激になるため、8日にはマクロン政権は約9万人の治安部隊を送り込み、仏全土で約1700人が拘束された。負傷者も多数出たようだ。

 こうしたデモは経済にも打撃を与えている。まず観光客が減っている。8日は観光名所のエッフェル塔やルーヴル美術館が営業を中止した。クリスマス商戦に合わせて華やかに飾られた店の入り口が、ベニヤ板や段ボールで覆われていた。

 フランス料理店の従業員は、客がまばらな店内を見ながらこう言った。「毎年、この時期の土曜はランチタイムからほぼ満席になるが、ご覧の通り。デモは大きな問題だ」

 日本企業も無関係ではない。ギャラリー・ラファイエット近くのユニクロは休業し、コンコルド広場に近い虎屋は、段ボールで店を覆って休業していた。売り上げへの影響は不可避だろう。