
DeNAは12月7日、医療情報サイト「WELQ」(ウェルク)をはじめとする情報まとめサイト(キュレーションサイト)に不正があったとされる問題をめぐり記者会見を開いた。当初出席予定のなかった創業者の南場智子取締役会長も出席。2日前、闘病の末に夫を亡くしたばかりの南場氏は、自身の経験を振り返りつつ「(医療情報については)ネットは役に立たない」と本音を漏らした。
DeNAの情報まとめサイトを巡っては、11月までに広告や記事内容の誤りについての指摘が相次いだ。DeNAは12月1日、医療以外を含む9媒体の記事公開を中止。ファッション情報を取り扱う「MERY」については当初公開を続けるとしていたが、一転閉鎖した。同社は今後第三者委員会を設置し、原因究明にあたる考えだ。
記者会見に出席したのは南場氏のほか、社長兼最高経営責任者(CEO)の守安功氏、経営企画本部長の小林賢治氏。記者会見の主要部分について、トピックごとに再構成する。
※守安社長の独自インタビューはこちら
なぜ、このような事態になったのか。
守安功社長兼CEO(以下、守安):問題を引き起こした要因は2つある。ひとつは、ゲーム事業で大きく成長してきたDeNAが、2012年にピークを迎え、業績が下がってきていたこと。ゲーム事業の立て直しはもちろんだが、それ以外の新事業もつくる必要があり、様々な新規事業にトライしてきた。だが、期待通りの成長はなかなか難しかった。
そんななか、外部に目をやれば「メルカリ」や「スマートニュース」など、勢いよく成長している企業があった。そのタイミングで、(当時は別会社だった)MERYなどと出会った。(MERYなどの買収後も)スピードや新しいことへのチャレンジなどスタートアップ企業の良さは守りながら事業を育てていきたいと考えた。ただ、東証1部上場企業としてしっかりした体制を築くというバランスがうまくとれなかった。
もう1点、メディア事業をつくることに対する認識、たとえば著作権者への配慮とか、質の担保にも問題があった。「正確かどうか」だけではなくて、その情報が本当にユーザーにとって良いものなのかも含めて、メディア事業者として行わないといけない(ことへの)認識が私自身甘かった。
今年の夏前ころ、医療情報について正確性の担保ができていないのはダメという指摘があり、一部(専門家に)監修をお願いしていた。ただ、記事が公開されたまま監修に入ってもらい、必要あらば修正することで良いと思っていた。そこに世間の認識とズレがあった。
南場氏「ゼロから会社を作り直す」
創業者として、今回の事態をどう受け止めているか。
会長の南場智子氏(以下、南場):ただただ残念で申し訳ないの一言。現場のオペレーションで、ミスや過ちがゼロになることはない。ただ、速やかにチェック機能を働かせ、管理・監督できる状況にしておくのが一流企業のありかただ。自ら過ちに気づき、きっちり是正する機能を徹底的に強化するべきだ。
内部通報とか監査のオペレーションは確立していたはず。それが、なぜここまで外部からご指摘・お叱りを受けるまで自浄作用が働かなかったのか。ここはしっかりと立て直さないといけない。「急激な成長を追い求めるあまり」という(守安社長の)言葉もあったが、ルールを守ったうえで成長も図るのは当然のこと。今回の件を機に、もう一度ゼロから会社を作り直すつもりで取り組んでいきたい。
南場会長はウェルクを利用したことがあったのか。利用時、どう思ったのか。
南場:大変不覚なことだが、ウェルクの情報提供については全く認識していなかった。家族の闘病が始まってから(編集注:南場氏は2011年に夫の看病のために社長職を退いた。夫は12月5日に死去した)、ネットを徹底的に調べたが、たとえば「癌に効くキノコ」とかいった話も出てきて、ネットはそれほど役に立たない、信頼できないことがわかった。それ以降、私の情報収集は基本的には論文と、専門家からのレクチャーが中心になった。(ウェルクについて)知ったのは報道があってから。「癌」ということばで検索し、いくつか記事が出てきたときに「いつからこんな医療情報を扱うようになったのか」と愕然とした。経営者として不覚だった。
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