賃金構造基本統計調査を用いた統計分析の結果を報告しよう。常用一般労働者にサンプルを絞ると、男性労働者のうち約92%が正社員無期で、正社員・有期は約2%、非正社員・無期は約2%、非正社員・有期は約5%であった。一方で女性労働者のうち正社員無期は約74%、正社員・有期は約3%、非正職員・無期は約6%、非正社員・無期は約17%であった。男性には非正規労働者が少ないがサンプルサイズが大きいため十分に正確に賃金差の分析はできる。

雇用形態が異なると属性も異なる

 男女ともに雇用形態間の賃金差は大きいが、最終学歴・潜在経験年数・勤続年数といった労働者の属性を制御するとその賃金差が大幅に減少することが明らかになった。

 このことは、雇用形態が異なると学歴・年齢・勤続年数といった属性も異なることを意味しており、雇用形態間の賃金差を分析するにあたっては統計分析をすることが重要であることを示唆している。最終的に、調査年・最終学歴・潜在経験年数・勤続年数・職種・役職・事業所固定効果を制御した結果によると、正社員・無期との所定内時間当たり賃金差は、

男性
正社員・有期-7.7%
非正社員・無期‐15.8%
非正社員・有期-18.4%
女性
正社員・有期-8.0%
非正社員・無期-16.9%
非正社員・有期-18.8%

……となる。これは例えば、男性の正社員・有期雇用労働者は正社員・無期労働者に比べて属性を制御しても平均で7.7%賃金が低いことを意味している。

男女ともに、正社員であれば無期と有期の差は8%程度である一方で、正社員と非正社員の差は16-19%前後となっている。正社員と呼ばれているかどうかという呼称上の区別が重要な影響を与えていることがわかる。

 ちなみに賃金構造基本統計調査によると「正社員・正職員」とそれ以外の差は「身分・処遇の違い」と定義されており、職務の違いや人材活用の仕組みの違いも含まれていると考えられる。したがって、ここでの賃金差のすべてが不合理な賃金差というわけではないのだが、この賃金差がなぜあるのかを丁寧に説明していくことが求められよう。

雇用形態間の賃金差を合理的に説明できるか

 自社のデータを用いて雇用形態間の賃金差が発見されたとすると、その賃金差を合理的に説明することが求められる。自社の賃金体系に沿っているといいたくなるかもしれないが、ここではその賃金体系が合理的に設計されているかどうかが問われていると考えるべきであろう。

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