さらに、これらの成分の選び方や混ぜ方にもノウハウがあるという。まず、肉の分子構造を分析し、その構造を再現するために適した成分と混ぜ方を開発しているという。「成形機はノウハウの塊」と三井物産の小西氏は話す。

 こうした作り方により、1つのパティから摂取できるタンパク質の量は20g、カロリーは290カロリーと、一般的なパティとほぼ変わらない。一方、コレステロールはゼロで、グルテンフリー、遺伝子組み換え作物(GMO)も使っていない。健康志向の消費者に訴求しながら、しっかり栄養も取れるように配慮している。

 米国には肉の代替として植物性タンパク質を使った食品は少なくない。だが、ビヨンド・バーガーを開発したサベージ・リバーは、技術力や商品コンセプトなどの面で投資家や既存の食品関連企業から注目を集めている。

三井物産は昨年、「植物で作った卵」にも出資

 創業者で共同CEO(最高経営責任者)のイーサン・ブラウン氏は、もともとは燃料電池を取り扱う新エネルギー関連の会社で働いていたが、動物愛護の観点から代替タンパク質の事業に着目し、サベージ・リバーを創業した。現在の主要株主には、先に挙げたタイソン・フーズのほか、米アマゾンなどへの投資実績があるクレイナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイアーズ(KPCB)や米ツイッターの創業者が運営するオブビアス・ベンチャーズなど著名ベンチャーキャピタル、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ夫妻が運営するビル&メリンダ・ゲイツ財団、米食品メーカー大手ゼネラル・ミルズや米国動物愛護協会が名を連ねる。

 同社の取締役には、フェアトレードで調達した原料の使用などにこだわるオネスト・ティー(米コカ・コーラ傘下)を創業したセス・ゴールドマン氏や、米マクドナルド前CEOのドン・トンプソン氏ら、食品業界の大物が就任している。それだけ、植物性タンパク質による代替肉の市場が有望視されているということだろう。

 今回、出資を決断した三井物産も、植物性タンパク質の市場に期待をかけている。昨年には、植物性タンパク質で卵を代替する商品を開発しているベンチャー企業、米ハンプトン・クリークに出資した。ハンプトン・クリークはマヨネーズのほか、クッキーやパンケーキの生地などを開発し、ホールフーズなど健康志向の顧客を多く持つスーパーだけではなく、米ウォルマート・ストアーズにも販路を広げている。

米ハンプトン・クリークが販売している植物性タンパク質を原料としたマヨネーズ

 「サベージ・リバーは今後、ステーキやベーコンを代替する商品も開発するとしている。市場動向を見ながら、いずれ日本での展開も考えていきたい」と三井物産の小西氏。日本でも糖質制限ダイエットがブームになるなど、健康志向は高まる一方だ。糖質を制限した分、ステーキなどの肉をより多く食べることで必要なカロリーを摂取しようという人も少なくない。ただ、タンパク質の生産効率で穀物と牛肉を比べると、牛肉は穀物より10倍以上効率が悪い(三井物産調べ)。日本でも「肉食」がもたらす環境負荷への懸念が今後、高まらないとは言いきれず、こうした植物性タンパク質の需要は将来的には増えていく可能性はありそうだ。

■訂正履歴
本文中で、サベージ・リバーの資金調達「シリーズF」でゼネラル・ミルズと米国動物愛護協会が出資したと記述していましたが、それ以前に出資をしていました。また、本件の出資を担当したのは、米国三井物産でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2016/12/7 14:40]