
いろいろ取りざたされていたトランプ政権の国務、国防両長官のうち、まず国防長官が決まりましたね。退役海兵隊大将のジェームズ・マティス将軍(66)が任命されました。この人事をどう見ますか。
高濱:全米が驚いています。国防長官に職業軍人が選ばれたのは1950年にジョージ・マーシャル退役陸軍元帥が任命されて以来65年ぶり。第二次大戦後の欧州復興の原動力となった「マーシャル計画」を提唱したあのマーシャル将軍です。
マーシャル将軍が国防長官になるまで、職業軍人が国防長官になることは法律で禁じられていました。それをトルーマン大統領(当時)が法改正して国務長官を務めたことのあるマーシャル将軍を国防長官にしたのです。
“反オバマ”の退役軍人と相次いで面談
トランプ氏は選挙中、「私を支持している退役将軍は90人近くいる」と何度か言っていました。これら約90人の退役将軍たちはトランプ支持を表明するとともに、公開状で「われわれは米軍という組織の在り方を見直すべき時期を失してきた」と米軍の組織改革を訴えていました。その中心的人物がマティス将軍でした。
トランプ氏の政権移行チームは米メディアに、数人の国防長官候補の名前をリークしていました。ジェフ・セッション上院議員(すでに司法長官に任命)、ステファン・ハドリー元大統領国家安全保障担当補佐官、 米下院のマイク・ロジャーズ元情報特別委員長らです。
トランプ氏は数人の退役将軍たちを自宅兼事務所のある「トランプ・タワー」に呼び寄せて「面接」してもいました。マティス将軍のほか、ジャック・キーン退役陸軍大将、ジョン・ケリー退役海兵隊大将たちです。彼らに共通しているのは、オバマ政権下のアフガニスタン、イラク戦争で第一線の最高司令官をしていたことです。しかもオバマ大統領の中東戦略に疑義を唱えていました。
そしてトランプ氏が白羽の矢を立てたのがマティス将軍でした。ビジネス経営と同じように、最後は自分一人で決めたようです。
トランプ政権の要となる国防長官人事を見て思い出すのは、トランプ氏が1987年に著した「The Art of the Deal」(商売のコツ)の中の以下の一節です。「私は複雑な計算をする機械(人間)を雇わないし、気まぐれな市場調査も信じない。私は自分で調査し、自分で結論を出す」("I don't hire a lot of number-crunchers, and I don't trust fancy marketing surveys. I do my own surveys and draw my own conclusions.")。
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